氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「起きたのか?」
振り返って立ち上がったのは弟のジークヴァルトだった。弟と言っても、数えるほどしか会ったことはない。多分もうすぐ十二歳になるはずだ。まともに会話をした記憶もあまりなかった。
フーゲンベルク家の跡取りとして生まれ、龍に選ばれてしまった不憫で哀れな弟だ。ぼんやりとそんなことを思いながら、アデライーデはきしむ腕に力を入れた。
何とか身を起そうとするが、体は痛みを訴えるばかりでちっとも言うことを聞いてくれない。ジークヴァルトは無言で背中を支えると、後ろにクッションをうまい具合に詰めてくれた。
「何か飲むか?」
小さく頷くと、テーブルに置いてあったコップを差し出してきた。コップにはストローと呼ばれる細い管がさしてある。これはジークヴァルトの婚約者の発案で開発されたものらしい。これがあると水分が楽にとれる。ジークヴァルトの婚約者はまだ八歳らしいが、まれにみる才女のようだ。
一息つくと、ジークヴァルトは今度は小さなグラスを差し出してきた。おどろおどろしいどす黒い緑色をしている。あの苦い薬湯だ。
「目が覚めたらこれを飲ませるように言われている」
アデライーデは一瞬嫌そうな顔をして、ジークヴァルトの手を借りながら、それを一気にあおった。いくら痛みを和らげてくれるとはいえ、まずいものはまずかった。
不意に飴玉が口元に差し出された。
「それを飲んだらこれを食わせるよう言われた」
そっけなく言って、ジークヴァルトはその飴玉をアデライーデの口元に押し込んだ。とたんに甘い味が口内を広がる。切れた口の中が多少しみるが、この際それは我慢するしかないだろう。
「横になるか?」
ジークヴァルトの問いかけに、アデライーデはゆるく首を振った。少し体を起こしていたい。寝すぎて背中がかえっておかしくなりそうだった。
振り返って立ち上がったのは弟のジークヴァルトだった。弟と言っても、数えるほどしか会ったことはない。多分もうすぐ十二歳になるはずだ。まともに会話をした記憶もあまりなかった。
フーゲンベルク家の跡取りとして生まれ、龍に選ばれてしまった不憫で哀れな弟だ。ぼんやりとそんなことを思いながら、アデライーデはきしむ腕に力を入れた。
何とか身を起そうとするが、体は痛みを訴えるばかりでちっとも言うことを聞いてくれない。ジークヴァルトは無言で背中を支えると、後ろにクッションをうまい具合に詰めてくれた。
「何か飲むか?」
小さく頷くと、テーブルに置いてあったコップを差し出してきた。コップにはストローと呼ばれる細い管がさしてある。これはジークヴァルトの婚約者の発案で開発されたものらしい。これがあると水分が楽にとれる。ジークヴァルトの婚約者はまだ八歳らしいが、まれにみる才女のようだ。
一息つくと、ジークヴァルトは今度は小さなグラスを差し出してきた。おどろおどろしいどす黒い緑色をしている。あの苦い薬湯だ。
「目が覚めたらこれを飲ませるように言われている」
アデライーデは一瞬嫌そうな顔をして、ジークヴァルトの手を借りながら、それを一気にあおった。いくら痛みを和らげてくれるとはいえ、まずいものはまずかった。
不意に飴玉が口元に差し出された。
「それを飲んだらこれを食わせるよう言われた」
そっけなく言って、ジークヴァルトはその飴玉をアデライーデの口元に押し込んだ。とたんに甘い味が口内を広がる。切れた口の中が多少しみるが、この際それは我慢するしかないだろう。
「横になるか?」
ジークヴァルトの問いかけに、アデライーデはゆるく首を振った。少し体を起こしていたい。寝すぎて背中がかえっておかしくなりそうだった。