氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 エマニュエルの手を取ったままの状態で すかさず笑顔で返され、リーゼロッテは(めん)()らった。

「え……? もうよろしいのですか?」
「うん、カークのくだりで調書が埋まりそうだし。もう充分でしょ」

 ようやくエマニュエルの手を解放したカイに、満面の笑顔でそう言われ、リーゼロッテはうぐっと言葉を詰まらせた。

(異形の浄化を完璧にして、カイ様を見返す計画が……)

 涙目になったリーゼロッテをカイはおもしろそうに見やった。

「それに、このあと王城に戻って、ハインリヒ様の護衛に加わらないといけないからね。今日は神殿で王家の祭事(さいじ)があって、騎士団総出(そうで)(にん)に当たるんだ」
「それでジークヴァルト様も、最近お忙しくされていたのですね。でしたら、あまりお時間をとらせてはいけませんわね……」
「まあ、今日のハインリヒ様の護衛のメインはジークヴァルト様だから、そんなに慌てなくても平気だよ。今回の式典は人の出入りが多くて、オレの護衛じゃ心もとないんだって。こんなに誠心誠意仕えてるのにさ、ハインリヒ様もひどいこと言うよねー」

 ちっとも(こた)えていない様子で、カイは(ほが)らかに笑った。

「で、何? デビューのダンスのお相手ならよろこんでするけど?」
 ジークヴァルト様が許せばの話だけどね、といたずらっぽく付け加える。

「ダンスはぜひに……ですが今日はそのようなことではなくて……カイ様にお渡ししたいものがあるのです」

 神妙(しんみょう)な様子のリーゼロッテに、カイは「ん?」という顔をした。

「渡したいもの? ……何それ、ジークヴァルト様が静かに(にら)んでくる展開が見えるんだけど」
「……? ヴァルト様は何も関係ありませんわ」

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