氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ん……ヴァルト様、それはくすぐったいので」
「じっとしてろ」
確かめるように力を流すジークヴァルトにしがみつく。力を使い果たした後なので、余計に心配なのだろう。そう思うとリーゼロッテも我慢せざるを得なくなる。
一通り確かめて満足したのか、ジークヴァルトがその手を止めた。かと思うとリーゼロッテの頬に手を添えてくる。顔を上向かされて、リーゼロッテはジークヴァルトの瞳を覗き込んだ。
(あれ……?)
いつもの流れでは青い瞳と見つめ合うのだが、ジークヴァルトの視線がずれている。試しに明後日の方に目を向けてみたが、ジークヴァルトはじっと同じ場所を見ているようだ。
なんとなく口元を見られているような気がして、リーゼロッテは口角を少しばかり上げてみた。すると微妙にジークヴァルトの口の端が動いた。続いて口をへの字にしてみる。つられるようにジークヴァルトの口もへの字に曲がった。
それを見て取ったリーゼロッテは、にゅっと唇を突き出した。タコのような変顔をすれば、ジークヴァルトはもっと反応するのではないか? そんな思いでやったことだ。
ジークヴァルトがカっと目を見開いた瞬間、ドンっ、と空気が揺れた。その振動に思わずジークヴァルトの首筋にしがみつくと、さらに部屋中の物が飛び跳ねた。
(こ、公爵家の呪い!?)
エッカルトに聞いた話だが、公爵家では時々異形が騒ぎ出す。思わず上を見上げると、先ほどより近い距離にジークヴァルトの顔があった。驚いたような表情で、やはり自分の口元を見つめている。
「ひゃあっ」
ますます揺れる部屋の中、リーゼロッテはさらに強くジークヴァルトにしがみついた。いつぞやの執務室を思わせる騒音だ。
「公爵様ぁ。お気持ちは重々お察しいたしますがぁ、どうぞご自制くださいませねぇ。マテアスさんからの伝言ですよぅ」
隣の部屋から顔を出したベッティが、のほほんと声をかけてきた。その後ろでエラが青い顔をしている。
ぐっと奥歯を噛みしめると、ジークヴァルトはうなだれて大きく息を吐いた。そんなめずらしい様子に、リーゼロッテが心配そうにのぞき込む。
「とにかく今日はゆっくり休め。明日からはカークを連れて行けば、屋敷の中ならどこへ行っても構わない」
そう言うとジークヴァルトは、リーゼロッテを膝から降ろした。部屋の中はいつの間にか沈静化している。
「もうすぐ新年を祝う夜会がある。今回は公爵家から連れて行くからそのつもりでいろ」
「わたくしも出席してよろしいのですか?」
リーゼロッテの瞳が輝く。
「ああ。だが、絶対にオレのそばを離れるなよ」
くぎを刺すように言うジークヴァルトに、リーゼロッテは何度もこくこくと頷いた。
「じっとしてろ」
確かめるように力を流すジークヴァルトにしがみつく。力を使い果たした後なので、余計に心配なのだろう。そう思うとリーゼロッテも我慢せざるを得なくなる。
一通り確かめて満足したのか、ジークヴァルトがその手を止めた。かと思うとリーゼロッテの頬に手を添えてくる。顔を上向かされて、リーゼロッテはジークヴァルトの瞳を覗き込んだ。
(あれ……?)
いつもの流れでは青い瞳と見つめ合うのだが、ジークヴァルトの視線がずれている。試しに明後日の方に目を向けてみたが、ジークヴァルトはじっと同じ場所を見ているようだ。
なんとなく口元を見られているような気がして、リーゼロッテは口角を少しばかり上げてみた。すると微妙にジークヴァルトの口の端が動いた。続いて口をへの字にしてみる。つられるようにジークヴァルトの口もへの字に曲がった。
それを見て取ったリーゼロッテは、にゅっと唇を突き出した。タコのような変顔をすれば、ジークヴァルトはもっと反応するのではないか? そんな思いでやったことだ。
ジークヴァルトがカっと目を見開いた瞬間、ドンっ、と空気が揺れた。その振動に思わずジークヴァルトの首筋にしがみつくと、さらに部屋中の物が飛び跳ねた。
(こ、公爵家の呪い!?)
エッカルトに聞いた話だが、公爵家では時々異形が騒ぎ出す。思わず上を見上げると、先ほどより近い距離にジークヴァルトの顔があった。驚いたような表情で、やはり自分の口元を見つめている。
「ひゃあっ」
ますます揺れる部屋の中、リーゼロッテはさらに強くジークヴァルトにしがみついた。いつぞやの執務室を思わせる騒音だ。
「公爵様ぁ。お気持ちは重々お察しいたしますがぁ、どうぞご自制くださいませねぇ。マテアスさんからの伝言ですよぅ」
隣の部屋から顔を出したベッティが、のほほんと声をかけてきた。その後ろでエラが青い顔をしている。
ぐっと奥歯を噛みしめると、ジークヴァルトはうなだれて大きく息を吐いた。そんなめずらしい様子に、リーゼロッテが心配そうにのぞき込む。
「とにかく今日はゆっくり休め。明日からはカークを連れて行けば、屋敷の中ならどこへ行っても構わない」
そう言うとジークヴァルトは、リーゼロッテを膝から降ろした。部屋の中はいつの間にか沈静化している。
「もうすぐ新年を祝う夜会がある。今回は公爵家から連れて行くからそのつもりでいろ」
「わたくしも出席してよろしいのですか?」
リーゼロッテの瞳が輝く。
「ああ。だが、絶対にオレのそばを離れるなよ」
くぎを刺すように言うジークヴァルトに、リーゼロッテは何度もこくこくと頷いた。