氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 貴族の部屋には、自室と言えど来客用の居間があるので、エマニュエルが同席している状態でカイが部屋に入ること自体は、世間体的にみて問題はないだろう。しかしそれを、ジークヴァルトが良しとしないのは目に見えている。

「もう少しカークを観察したいし、ね?」

 なんとか言いくるめると、リーゼロッテは頷いて部屋の中へひとり入っていった。その後にエマニュエルが続く。

「デルプフェルト様……お気遣い感謝いたしますわ」
「オレもまだ命は()しいからね」

 その返事にくすりと笑って、エマニュエルはぱたんと扉を閉めた。

 廊下に残されたのは、カイとカークのふたりきりだ。カークは扉の横で、姿勢よくぴしりとたたずんでいる。

(はは、ホントの護衛みたいだ)

 異形の者に取りつかれやすい人間は確かにいるが、(した)われる人間など見たこともない。

「泣き虫の異形の方も気になるけど……」

 取りこぼしておかないと、次に公爵家に来る理由がなくなってしまう。

「こんなおもしろいこと、なかなかないしね」

 反応のないカーク相手に、カイが独りごちていると、再び部屋からリーゼロッテが「お待たせしました」と顔を出した。

 その手には、小さな箱が大事そうに握られている。その箱からにじみ出る力の波動に気づくと、カイの()りつけた様な笑顔が、その顔から消えた。

「カイ様……わたくし、これをアンネマリーから預かっていて……」
「……そう」

 カイはそれ以上何も言わずに、リーゼロッテからその小箱を受け取った。

「こちらの手紙もカイ様にと……」

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