氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 翌日すっきりと目覚めたリーゼロッテは、お腹がすくことなく朝を迎えた。力を果たした影響は、もうすっかりなくなったようだ。

「本日は夜会のドレスの仕立てでマダム・クノスペ来る予定です」

 エラに髪を梳かれながら、リーゼロッテは若干遠い目になる。

「あの時間がまたやってくるのね……」

 お針子たちに囲まれて、あちこち採寸されまくるのだ。リーゼロッテはここ最近体型が変わってきている。ドレスの微調整はどうしても必要なのだが、着せ替え人形にでもなったと思わなければ、あの時間は耐えられそうもない。

「今回は夜会に出るための一着のみと聞いていますから、先日よりも短いのではないでしょうか」
「本当? ならよかったわ」

 ほっと息をつくと、何かを思い出しようにリーゼロッテは小さな手鏡をその手に取った。確かめるように、いろいろな角度から自らの顔を覗き込む。

「お嬢様? お顔に気になる所でもございますか?」
「それがどこもおかしくないの……」

 その返答に、エラは横にいたベッティと目を合わせた。そのベッティもよくわからないと首をかしげている。

「おかしくないのは何よりですが……何かほかに気がかりなことがあるのですか?」
「昨日からジークヴァルト様と目が合わなくて」

 そう言いながら、リーゼロッテは鏡の中をしげしげと眺めた。にこっと笑ってみたり、口を開いたり閉じたり、顔を傾けて斜めからのぞき込んだりをくり返している。

「なんだか口元ばかりを見られているような気がするのよね」

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