氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 みなでソファに座り、談笑が始まる。アデライーデとリーゼロッテに加えてエマニュエルが横に並んで腰かけた。エラは給仕に回ろうとティーポットを手にすると、ベッティがエラも座るようにと促してくる。

「ここはわたしにお任せくださいましぃ。エラ様は男爵令嬢なのですから、遠慮することはございませんよぅ」
「え? でもわたしは……」

 肩を押されてエラはソファに腰を掛けた。その両脇にエーミールとニコラウスが座ってしまい、エラは身動きが取れなくなる。

(わたしだけ場違いなんじゃ……)

 自分以外はみな伯爵家以上の家柄の人間だ。しがない一代限りの男爵の娘には、無相応な場に思えてならない。身の置き場のないまま、おしゃべりに花を咲かせているリーゼロッテたちを、エラは黙って眺めているしかなかった。

「……何、この異形。めっちゃ目がきゅるんとしてるし」

 不意に右隣りに座っていたニコラウスが、床から何かを拾い上げる動作をした。その何かを指でつまみ上げ、それをしげしげと眺めている。しかし、エラの目には、ニコラウスが何かを持っているようには見えなかった。

「それはリーゼロッテ様に温情を与えられた小鬼だ」

 逆隣りに座るエーミールが、エラ越しにニコラウスを見やりながら言った。その言葉に、エラはピンとくる。

「もしや、そこに異形の者がいるのですか!?」

 食い気味に問うと、ニコラウスは驚いたようにエラと目を合わせた。

「えっと、あなたは……」
「彼女はエラ・エデラー。リーゼロッテ様の侍女だ」

 エーミールの言葉に、エラははっとした。

「申し訳ございません、ニコラウス・ブラル様。わたしはエデラー男爵の娘、エラ・エデラーでございます」
「エラは無知なる者だ。異形を視る能力はない」
「無知なる者?」

 ニコラウスは首をかしげると、手にした何かをぽいと後ろ手に放り投げた。そのままエラの両手をがばりと握る。

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