氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
◇
「そこまで!」
公爵家の片隅にある鍛錬場でエーミールの声が響く。目の前にいるのは、丸腰になったニコラウスと、その鼻先に細剣を突き付けているアデライーデだ。
(上手いこと負けている)
取り落とした剣を拾い上げているニコラウスに、エーミールはそんな感想を抱いた。
「まったく、いつも手ごたえないんだから」
「だから最初にエーミール様と手合わせすればいいって言っただろうが」
「いやよ、エーミールはすぐに手加減するもの」
アデライーデがぷいとそむけると、エーミールは内心苦笑した。そこら辺の騎士よりもアデライーデの腕が立つとはいえ、本気を出したニコラウスにかなうことはないだろう。
アデライーデは気位の高い女性だ。わざと負けられるなど、そのプライドが許さない。だからこそ、ニコラウスの負け方は見事だった。アデライーデに気取られずにわざと負けるなど、エーミールには到底真似できそうにない。
「アデライーデ様に本気で剣を向けるなど、わたしにできる訳はないでしょう」
エーミールの言葉にアデライーデの頬が膨らむ。
「その台詞は聞き飽きたわ」
「さすがグレーデンの貴公子! もてる理由がわかるなぁ」
このニコラウスはどうにもつかめない奴だ。相変わらず気持ちの悪いことを言う男だが、エーミールと同じく細身に見えるその体躯は、グレーデン家で手合わせとした時にかなり鍛え上げていることが見て取れた。筋肉がつきにくい体質のエーミールにしてみれば、うらやましい限りだ。
(他人がうらやましいなど、馬鹿げているな)
エーミールは自分に足りない部分を補うために、死に物狂いで剣技を磨いた。今ではあの筋肉の塊のようなヨハンにも、手合わせで十中八九は勝つことができる。
「次はわたしと勝負だ、ニコラウス」
「ええ? 勘弁してくださいよ! オレ、昨日の徹夜明けからの休暇中なんすよ」
ニコラウスが助けを求めるようにアデライーデを見た。
「そこまで!」
公爵家の片隅にある鍛錬場でエーミールの声が響く。目の前にいるのは、丸腰になったニコラウスと、その鼻先に細剣を突き付けているアデライーデだ。
(上手いこと負けている)
取り落とした剣を拾い上げているニコラウスに、エーミールはそんな感想を抱いた。
「まったく、いつも手ごたえないんだから」
「だから最初にエーミール様と手合わせすればいいって言っただろうが」
「いやよ、エーミールはすぐに手加減するもの」
アデライーデがぷいとそむけると、エーミールは内心苦笑した。そこら辺の騎士よりもアデライーデの腕が立つとはいえ、本気を出したニコラウスにかなうことはないだろう。
アデライーデは気位の高い女性だ。わざと負けられるなど、そのプライドが許さない。だからこそ、ニコラウスの負け方は見事だった。アデライーデに気取られずにわざと負けるなど、エーミールには到底真似できそうにない。
「アデライーデ様に本気で剣を向けるなど、わたしにできる訳はないでしょう」
エーミールの言葉にアデライーデの頬が膨らむ。
「その台詞は聞き飽きたわ」
「さすがグレーデンの貴公子! もてる理由がわかるなぁ」
このニコラウスはどうにもつかめない奴だ。相変わらず気持ちの悪いことを言う男だが、エーミールと同じく細身に見えるその体躯は、グレーデン家で手合わせとした時にかなり鍛え上げていることが見て取れた。筋肉がつきにくい体質のエーミールにしてみれば、うらやましい限りだ。
(他人がうらやましいなど、馬鹿げているな)
エーミールは自分に足りない部分を補うために、死に物狂いで剣技を磨いた。今ではあの筋肉の塊のようなヨハンにも、手合わせで十中八九は勝つことができる。
「次はわたしと勝負だ、ニコラウス」
「ええ? 勘弁してくださいよ! オレ、昨日の徹夜明けからの休暇中なんすよ」
ニコラウスが助けを求めるようにアデライーデを見た。