氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「これはこれは、イジドーラ王妃」
思考を遮るように、耳障りな声がした。禿げあがった神官が、大きな腹をゆすりながらこちらへと近寄ってくる。
「ミヒャエル司祭枢機卿……」
目をすがめてその名をつぶやくと、カイはイジドーラをかばうようにミヒャエルの前に立ちはだかった。
「王妃殿下の行く先を阻むなど、いかにミヒャエル殿と言えど不敬にあたりますよ」
「不敬などと大げさな。わたしはただイジドーラ王妃にご挨拶申し上げようとしただけですよ」
下卑た笑いを乗せるミヒャエルだったが、その目は全く笑っていない。カイを押しのけてイジドーラの手を取ろうとする。
「現在、ディートリヒ王は祈りの儀に籠られています。そんな時に王妃殿下に触れるなど、ミヒャエル殿は命が惜しくないようだ」
カイが腰に下げた細剣のつばに手をかけると、ミヒャエルは慌てたように数歩下がった。絨毯に足を取られ、大きな腹がぼよんと揺れる。
「そ、それならば先にそう言えばいいものを!」
「これは失礼。神殿の、それも組織の上部におられる司祭枢機卿殿が、祈りの儀の時期を知らないなどと、思いもよりませんでしたよ」
祈りの儀とは、王が青龍へと祈りを捧げる儀式のことだ。この国の王は、月に三日間ほど祈りの間に籠る。その間に王妃は禊をして王の帰りを待つのがしきたりだ。
顔を赤くしてカイを睨みつけたミヒャエルは、「忌み子風情が!」と吐き捨ててから足早に去っていった。
「随分と耳障りだこと。でも、わたくしは別にかまわなかったのに」
「オレがついているのに、そんなこと許せるわけないでしょう。イジドーラ様の身に何かあって、王の怒りを買うのはご免です」
楽し気に笑みを浮かべるイジドーラに、カイはがっくりとうなだれた。
思考を遮るように、耳障りな声がした。禿げあがった神官が、大きな腹をゆすりながらこちらへと近寄ってくる。
「ミヒャエル司祭枢機卿……」
目をすがめてその名をつぶやくと、カイはイジドーラをかばうようにミヒャエルの前に立ちはだかった。
「王妃殿下の行く先を阻むなど、いかにミヒャエル殿と言えど不敬にあたりますよ」
「不敬などと大げさな。わたしはただイジドーラ王妃にご挨拶申し上げようとしただけですよ」
下卑た笑いを乗せるミヒャエルだったが、その目は全く笑っていない。カイを押しのけてイジドーラの手を取ろうとする。
「現在、ディートリヒ王は祈りの儀に籠られています。そんな時に王妃殿下に触れるなど、ミヒャエル殿は命が惜しくないようだ」
カイが腰に下げた細剣のつばに手をかけると、ミヒャエルは慌てたように数歩下がった。絨毯に足を取られ、大きな腹がぼよんと揺れる。
「そ、それならば先にそう言えばいいものを!」
「これは失礼。神殿の、それも組織の上部におられる司祭枢機卿殿が、祈りの儀の時期を知らないなどと、思いもよりませんでしたよ」
祈りの儀とは、王が青龍へと祈りを捧げる儀式のことだ。この国の王は、月に三日間ほど祈りの間に籠る。その間に王妃は禊をして王の帰りを待つのがしきたりだ。
顔を赤くしてカイを睨みつけたミヒャエルは、「忌み子風情が!」と吐き捨ててから足早に去っていった。
「随分と耳障りだこと。でも、わたくしは別にかまわなかったのに」
「オレがついているのに、そんなこと許せるわけないでしょう。イジドーラ様の身に何かあって、王の怒りを買うのはご免です」
楽し気に笑みを浮かべるイジドーラに、カイはがっくりとうなだれた。