氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
◇
「ニコ!」
「アデライーデ、お前どこ行ってたんだよ! まだ異形に憑かれた者たちはウヨウヨいるんだ。王太子殿下の姿も見失っちまったし、バルバナス様はまだ到着しないし」
「いいから一緒に来てちょうだい」
有無を言わさず腕をつかんで引っ張っていく。
「おあっ、ちょ、待てってば」
バランスを崩しながらもニコラウスはアデライーデに続いた。
「確かここらへんよね。ニコ、ちょっとこれ持っていて。一滴もこぼすんじゃないわよ」
水差しを渡されたニコラウスは、その中身を不思議そうにのぞき込む。水から不思議な気を感じる。何か清らかな、そんな感じの柔らかな波動だ。
「これ、何の水だ?」
くんくんと臭いをかいでみる。
「ちょっと飲んだりしないでよ! それは大事な妖精の聖水なんだから!」
「へ? 妖精の聖水?」
アデライーデは古びた扉を開けると、その中に入っていった。ここは使用人が出入りするような場所だ。不思議に思いつつ、ニコラウスもその後ろ姿を追う。
「ここは……配管の管理室か?」
この王城は寒さ対策で、城の壁のいたるところに配管が走っている。その中を温泉水が巡り、寒さを和らげる役割を果たしていた。
「用があるのはこっちよ」
アデライーデはひとつの配管のバルブを閉めて、配管の始まりの蓋になった場所をぱかりと開けた。
「それ貸して」
ニコラウスから水差しを取り戻すと、アデライーデはおもむろにその中身を配管の中に流し入れた。
「おい、そんなとこに入れてどうする気だ? これって、防火用の配管なんじゃ……」
「いいのよ。この水を王城内に撒くのが目的なんだから」
アデライーデはすべての水を流し終えると、壁に向けて指を彷徨わせた。
「ええと、どれが散水のボタンなのかしら?」
手当たり次第に壁にあるボタンを押していく。
「おまっそんな闇雲に押して大丈夫なのか!?」
「別にいいでしょ。どれだかよく分からないし」
「いや、それ、絶対に駄目だろう!」
ニコラウスがアデライーデの腕をつかんでやめさせようとする。そのタイミングで、廊下の遠くから誰かの悲鳴が響き、次いでもくもくと蒸気が漂ってきた。
「ニコ!」
「アデライーデ、お前どこ行ってたんだよ! まだ異形に憑かれた者たちはウヨウヨいるんだ。王太子殿下の姿も見失っちまったし、バルバナス様はまだ到着しないし」
「いいから一緒に来てちょうだい」
有無を言わさず腕をつかんで引っ張っていく。
「おあっ、ちょ、待てってば」
バランスを崩しながらもニコラウスはアデライーデに続いた。
「確かここらへんよね。ニコ、ちょっとこれ持っていて。一滴もこぼすんじゃないわよ」
水差しを渡されたニコラウスは、その中身を不思議そうにのぞき込む。水から不思議な気を感じる。何か清らかな、そんな感じの柔らかな波動だ。
「これ、何の水だ?」
くんくんと臭いをかいでみる。
「ちょっと飲んだりしないでよ! それは大事な妖精の聖水なんだから!」
「へ? 妖精の聖水?」
アデライーデは古びた扉を開けると、その中に入っていった。ここは使用人が出入りするような場所だ。不思議に思いつつ、ニコラウスもその後ろ姿を追う。
「ここは……配管の管理室か?」
この王城は寒さ対策で、城の壁のいたるところに配管が走っている。その中を温泉水が巡り、寒さを和らげる役割を果たしていた。
「用があるのはこっちよ」
アデライーデはひとつの配管のバルブを閉めて、配管の始まりの蓋になった場所をぱかりと開けた。
「それ貸して」
ニコラウスから水差しを取り戻すと、アデライーデはおもむろにその中身を配管の中に流し入れた。
「おい、そんなとこに入れてどうする気だ? これって、防火用の配管なんじゃ……」
「いいのよ。この水を王城内に撒くのが目的なんだから」
アデライーデはすべての水を流し終えると、壁に向けて指を彷徨わせた。
「ええと、どれが散水のボタンなのかしら?」
手当たり次第に壁にあるボタンを押していく。
「おまっそんな闇雲に押して大丈夫なのか!?」
「別にいいでしょ。どれだかよく分からないし」
「いや、それ、絶対に駄目だろう!」
ニコラウスがアデライーデの腕をつかんでやめさせようとする。そのタイミングで、廊下の遠くから誰かの悲鳴が響き、次いでもくもくと蒸気が漂ってきた。