氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 突如広がった清廉な気が、一気に女神の力を押し流していく。それを感じ取ったミヒャエルは、動揺からその瞳を開けた。

「なんだ? 何が起きたのだ?」

 異形に飲まれていた者も次から次へと正気に戻っていく。配下に置いた貴族たちも、思うように操れなくなった。

 再び瞳を閉じて、王城内をくまなく探る。王子は青龍の加護のある部屋へと逃げ込んだようだ。先ほどはうまくいかなかったが、またじっくりといぶり出せばいいだけの話だ。

 それよりも、この広がり続ける力は何なのか。ミヒャエルは精神を統一して、その忌々しい力が最も濃い場所を丹念に探っていった。

(いた、ここだ)

 王城の一室が脳裏に浮かぶ。その部屋にいるのはふたりの人間。ひとりはフーゲンベルクの若き公爵。もうひとりは、緑の気を纏う令嬢だ。

(あの緑はラウエンシュタインの証……ひとり娘がいるとは聞いていたが、こんな所に隠れていたとは)

 女神があの血脈は危険だと教えてくれている。己が王となるにあたって、障害になりかねない。今すぐにでも排除すべき存在だ。

 もはや傀儡である貴族は使い物になりそうもない。ならば自身の力でどうにかするだけだ。自分には女神がついている。その力を持ってすれば、あんな小娘などひとひねりだ。あの部屋にも龍の加護が施されているようだが、女神の力の前では薄紙も同然だった。

 眉間に神経を集中して、紅の力を凝縮していく。限界まで高まったのを感じて、ミヒャエルはその目を見開いた。

 真っ赤に染まった瞳が光を放つ。その穢れた力は、まっすぐと緑の令嬢めがけて放たれた。

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