氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「先ほどの洗練(せんれん)された儀式といい、ますますご健勝(けんしょう)のようですな」

 王妃の体を上から下までねめつけるように見る神官に、後ろに控えたルイーズの顔がしかめられる。それを軽く手で制すると、王妃は妖艶(ようえん)な笑みを口元に浮かべた。

「ミヒャエル司祭枢機卿(しさいすうきけい)……あなたも変わらずの様子、何よりね」
「ありがたきお言葉……このミヒャエル、感激のあまり涙が出そうです」

 下卑(げび)た笑いを乗せ、再び王妃の体をじろじろとぶしつけに見ている枢機卿(すうきけい)に、後ろにいた女性騎士が気色ばんだ。

「控えなさい」

 王妃は静かな声で言うと、司祭枢機卿は大きな体をゆすって勝ち誇ったように(わら)い声をあげた。

「先日は、わたしの誕生を祝う会に出席してくださり、誠にありがとうございます。本来なら王太子殿下にご出席いただくはずだったところ、イジドーラ様(みずか)ら買って出ていただけたとか。美しいイジドーラ様に心から祝ってもらえるなど、光栄の(きわ)みですな」
「重要な執務を王より任され、王太子は日々忙しい身。些細(ささい)な公務くらい、引き受けてやるのが親心というものでしょう?」

 イジドーラ王妃が涼しい顔でそう返すと、後ろに控えた女性騎士が、()き出したのをごまかすような中途半端な息を漏らした。ミヒャエル司祭枢機卿は引きつった顔を赤くして、その女性騎士を(にら)みつける。

「さあ、王女が待っているわ。戻りましょう」

 そこをどけと(あん)ににおわせるが、ミヒャエルは不遜(ふそん)な笑みをたたえ、無理矢理イジドーラ王妃の手を取った。

「美しきイジドーラ様に青龍のご加護があらんことを」

< 67 / 684 >

この作品をシェア

pagetop