氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 ハインリヒが生まれた翌年、クラッセン侯爵家で女の子が誕生した。例のハインリヒお気に入りの巨乳令嬢が嫁いだ先で産んだ子供だ。
 その女の子はアンネマリーと名付けられ、亜麻色の髪がふわふわの可愛らしい赤ん坊だと噂で聞いた。

 ここまで来て、わたしはもう迷っている時間はないのだと思い知った。

 手をこまねいていると、いずれアンネマリーが無残にも殺されてしまうかもしれない。ゲームではリプレイが可能だし、スチルを保存しておけばいつでもアンネマリーに会うことはできた。
 しかし、この世界でアンネマリーはただ一人。その存在が永遠に失われるなどあっていいはずもない。

 例えこの世界のアンネマリーがわたしの知るアンネマリーと似ても似つかない存在だったとしても、彼女の死亡フラグはすべて回避する道を選択しよう。

 二歳の時点でわたしはそう決意した。

 ゲームの設定にはなかったことももちろんあった。
 いちばん大きな事象は、龍の存在だ。

 ブラオエルシュタインは建国以来、龍の加護を受けてきた。その力により長年平和が保たれてきたのだ。これは禁断のKRGでは出てこない話だった。

 そして、龍の託宣……この託宣を受けた者は、それに必ず従わなくてはならない。それに逆らおうとすると、恐ろしい龍の制裁が加わるのだ。

 うん、ラノベだね。これぞラノベ的展開だよね。

 託宣を受けた者には、龍のあざなるものが体に刻まれる。生まれたばかりのハインリヒの小さな手にも龍のあざがあった。
 母セレスティーヌの顔にもそれは刻まれていた。なぜだかハインリヒが生まれたときに消えてなくなったのだが。

 そして第一王女であるクリスティーナ姉様の手の甲にも、龍のあざは刻まれていた。
 王家の者として、託宣を賜らなかったのは、わたしと伯父のバルバナスくらいだ。こんなエピソードはゲームでは全く出てこなかった。

 何より、姉様が龍の託宣を受けたと知って、わたしの取るべき道はひとつしかないと思い当たった。

 禁断のKRGの隠しルート。
 それは、攻略対象の誰とも結ばれないエンドを迎えたときにのみ解放される、アランシーヌ国の第三王子と恋に落ちるストーリーだ。


< 674 / 684 >

この作品をシェア

pagetop