氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 アンネマリーが生まれた翌年、ラウエンシュタイン公爵家でリーゼロッテが誕生した。
 ゲーム通りになるのならば、母様の命はあと二年もない。信じたくはなかったが、ハインリヒを生んでからというもの母様の体調は悪くなる一方だった。

 わたしはできる限り母様と時間を共にした。
 アランシーヌ国の話をせがみ、アランシーヌの情報をたくさん聞きだした。

 ブラオエルシュタインとアランシーヌでは話す言葉も文化も違う。ゲームでは言葉の壁など存在しなかったが、現実はそう簡単にはいかないようだ。

 母様と話すときは、ほぼアランシーヌの言葉で会話した。わたしの異常にも思えるあまりの必死な態度に、母様も戸惑っていたようだ。

 そんなある日、母様に言われた。何か事情があるのだろうと。
 自分はもう長くない。協力は惜しまないから、そこまで必死になる理由を話してくれないかと。

 わたしは泣いた。
 必死すぎて自分でも気づいていなかったのだろう。どうなるかわからない未来のためにがむしゃらにあがく日々は、孤独で空恐ろしいものだった。

 泣きながらわたしはすべてを話した。前世の事。ゲームのこと。これから起こるかもしれないこと。

 セレスティーヌ母様は、何一つ否定することなく、わたしの話す事すべてを受け入れてくれた。ただ、バルバナスルートのBL話あたりでは、肩を始終震わせていた。

 最愛の夫への侮辱に耐えかねたのかと不安になったが、よく見るとどうやら必死に笑いをこらえているようだった。しばらくの間、母様はこの国の王である父の顔を見るたびに、同じようにその細い肩を震わせていた。


 母様はそれ以来、アランシーヌ国の内情を事細かに教えてくれた。貴族間の微妙なバランス。アキレス腱となり得るウィークポイント。
 それはゲームと共通することもあったし、はじめて聞くような内容も多くあった。それは味方として取り込むための情報だったり、政敵を脅す切り札となるような危うい情報まで、事細かに伝授してくれた。

 いずれなる王子妃として侮られない振舞い方、嫌味な相手のあしらい方、相手を手中に収める手腕手管、心理戦に負けない心がまえなど、ありとあらゆることをわたしは死に物狂いで母から学んだ。


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