氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「それにリーゼロッテ様への贈り物は、すべて旦那様の私財で贈られています。領民からの税は使われていないはずですわ。ですから、旦那様からの贈り物は、快く受けとってくださいませんか」

 エマニュエルは懇願するように言った。ジークヴァルトがリーゼロッテから贈られたものを、すべて大事にとってあることを、エマニュエルは知っている。それこそリーゼロッテが子供の頃によこした判読不明な手紙であったとしても。
 同じだけの分量の愛を返してくれとは言わないが、もう少し主人の思いが報われていいのではと思ってしまう。

「まあ、そうなのね。わたくしてっきり……」

 リーゼロッテは口元に手を当て、しばし考え込んだ。税が使われていないのなら、まだ気も軽くなる。だが、贈り物の回数はもっと減らしてもいいのではないだろうか?
 リーゼロッテがダーミッシュ領に戻ってから一週間は経つが、再びジークヴァルトとの文でのやり取りが行われていた。リーゼロッテが日々の出来事をしたため、その返事とともに毎日のように何かしらの贈り物が届けられている。

 今日も王都の流行りのお菓子が山盛り届けられていた。おすそ分けをもらえる使用人たちはいたくよろこんでいるのでそれはそれでいいのだが、こうも毎日だとジークヴァルトも気疲れしないだろうか。

 リーゼロッテも贈り物はうれしい。ただ回数を減らしてもらいたいだけなのだ。なんでも従者のマテアスの話だと、リーゼロッテへのプレゼントはすべてジークヴァルトが自ら選んで手配しているらしかった。

 一カ月ほど公爵領で過ごし、ジークヴァルトの多忙な毎日を目の当たりにした。その後ではなお更、無理はしてほしくないと思ってしまう。幾度となく、これ以上気を使わなくてもいいと伝えているが、そのたびに問題ないと返されてきた。

(どうしたらヴァルト様に伝わるのかしら……)

 日々忙しくしているジークヴァルトを思いつつ、今日も今日とてリーゼロッテはお礼の手紙をしたためるのであった。



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