氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「クリスティーナお姉様! お加減(かげん)は大丈夫ですの?」
「ええ、問題ないわ。心配してくれてありがとう、わたくしの可愛いピッパ」

 (かが)みこみながら、クリスティーナはピッパの頬にキスをした。

「大事はないか?」
「ええ、お父様」

 先に到着していたディートリヒ王に(たず)ねられ、クリスティーナは優雅(ゆうが)な礼を取った。
 クリスティーナは礼を(くず)すとディートリヒの前で(ひざ)をついて、豪奢(ごうしゃ)なソファに座る父王の膝の上にその白い手を乗せた。目を閉じて甘えるようにその美しい顔を寄せる。

「わたくしは好きなようにやらせていただいておりますわ。本当に、申し分ないくらい……」
「そうか……クリス、お前はそれでいい」

 ディートリヒがプラチナブロンドの長い髪を梳くと、クリスティーナは気持ちよさそうに菫色(すみれいろ)の瞳を閉じた。

「まあ、お父様ばかりずるいわ!」

 ピッパが駆け寄り、同じようにディートリヒの前に膝をついて、クリスティーナに抱き着いた。
 ディートリヒ王は、ピッパの髪も同じようにやさしい手つきでなでていく。二人の王女を見つめる王の金色の瞳は慈愛(じあい)に満ち、しかし、どこか遠くを見ているかのようだ。

「ピッパは王よりもクリスティーナが好きね」
「だって、クリスティーナお姉様には滅多(めった)にお会いできないんですもの!」

 そう言いながらピッパは隣のクリスティーナにさらにすり寄った。
 イジドーラはディートリヒの横に腰かけると、甘えるようなしぐさでディートリヒにもたれかかる。王女たちの髪を梳く手を止め、ディートリヒはイジドーラの白い手を(すく)い取り、その甲にそっと口づけを落とした。

()唯一(ゆいいつ)はそなただ、イジィ」
 少しだけ目を細め、ディートリヒは静かに言った。
「わたくしも王だけですわ」

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