氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ああ、随分(ずいぶん)と楽しそうな笑い声が聞こえましたね。一体何をお話されていたんですか?」

 カイが話題を変えるように言うと、ピッパは瞳を輝かせ(うなず)いた。それで機嫌(きげん)が直ってしまうから、ピッパはまだまだ子供だ。

「そうなの! 今、アンネマリーの話をしていたのよ! ねえ、お母様、アンネマリーは次はいつ王城に来るの? 先日、褒美(ほうび)を贈ったのでしょう?」

 ピッパの言葉に、思わずカイはハインリヒの顔を見た。もともと不機嫌だった顔の眉間には、さらに深いしわが寄せられている。

「ええ、褒美は喜んでもらえたようよ」
 幼い娘に向けるには妖しすぎる笑みを、イジドーラはその口元に浮かべた。

 数日前にアンネマリーからお礼状が届けられたが、それとは別に母親のジルケからもイジドーラは手紙を受け取っていた。アンネマリー同様、お礼の言葉がしたためられていたが、遠回しにイジドーラの行動を責めているような文面でもあった。

「それで、アンネマリーはいつ王城へ来るの?」
「そうね……次に顔を見るとしたら白の夜会だけれど……その時はきっと無理ね」

 白の夜会はデビュタントのための舞踏会(ぶとうかい)だ。その日、デビューを果たす者は、家族と共に出席するのが(つね)なので、王家のごり押しで夜会後に王妃の元へ呼ぶわけにはいかないだろう。

「じゃあその次は?」
 せがむように聞いてくるピッパに、イジドーラは少し考えるようなしぐさをした。

「次と言ったら……そうね、新年を祝う夜会があるわ。その日、アンネマリーには、離宮(りきゅう)(ほし)()みの()に泊まらせましょう」
「義母上……!」

 星読みの間は以前もアンネマリーが滞在していた部屋だ。イジドーラの(ふく)みを持たせた言葉に、ハインリヒが非難するような声を上げた。

 そんなハインリヒの様子には気づくことなく、「そんなに先なの……」とピッパは落胆(らくたん)の色を見せる。

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