氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「やはり、アンネマリーは直接、褒美のお礼に来るべきだわ! ねえ、クリスティーナお姉様もそうお思いになるでしょう?」
「ピッパ様! アンネマリー様は社交界デビューの準備でお忙しいと申し上げましたでしょう? ご自分がアンネマリー様とお話ししたいからと、()(まま)ばかり言ってはなりません」

 ルイーズにたしなめられると、ピッパは可愛らしく頬を膨らませた。

「だって、アンネマリーに会いたいのだもの。…………そうだわ……そうよ! それがいいわ!」
 突然、飛び跳ねるようによろこびだしたピッパに、一同の注目が集まる。

「ねえ、ハインリヒお兄様! お兄様がアンネマリーと結婚すればいいのよ! そうすれば、アンネマリーはずっと王城にいられるわ!」

 ピッパは頬を紅潮(こうちょう)させて瞳を輝かせた。無邪気(むじゃき)に爆弾を落とされたハインリヒは、目を見開いて固まっている。

「まあ、ピッパ。ハインリヒの結婚相手を勝手に決めるなんて」

 呆れたように言うクリスティーナに、ピッパはすかさず反論した。

「だって、アンネマリーよ! お兄様だってきっと好きになるわ」
「アンネマリーの気持ちだってあるでしょう?」
「アンネマリーもお兄様が好きよ! だって、お兄様の話をすると、アンネマリーはいつもすごくうれしそうにしていたもの!」

 ピッパは興奮したようにハインリヒを(あお)ぎ見た。

「ねえ、聞いて、お兄様! アンネマリーはね、あたたかくてふわふわでとっても(やわ)らかいの! (ねこ)殿下(でんか)なんかよりも、ずっといい(にお)いもするわ! お兄様、ふわふわ、お好きでしょう? だから、お兄様も絶対に、絶対にアンネマリーを好きになるわ!」

 力説するピッパを前に、青ざめた表情でハインリヒは立ち尽くしていた。そんなふたりを、イジドーラは表情を変えずに静観(せいかん)している。

 イジドーラはこの場をどうおさめるのだろう。カイがそんなことを思ってその美しい顔を見やっていると、不意にイジドーラがカイに目線を寄こしてきた。

(うわ、オレになんとかしろっていうわけ!?)

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