氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 目を見開いて抗議(こうぎ)の意思を伝えてみるが、いたずらな叔母(おば)は妖しい笑みを返してきただけだった。

「ああー、もう、ええと、ハインリヒ様がふわふわ好きなのはさておきまして……次の公務のお時間が差し迫っていますので、そろそろこの場を失礼しましょうか? ね、ハインリヒ様」

 この後ハインリヒに公務の予定はないが、投げやりにカイがそう言うと、ハインリヒは(かた)い表情のまま「ああ」と頷いた。

「ピッパ様も本日のお勉強がありますので、離宮へと戻りましょう」
 女官のルイーズの言葉にピッパが信じられないといった顔をした。

「いやよ! 今日はクリスティーナお姉様と一緒にいるわ」
「ピッパ様!」

 ルイーズの怒り声に苦笑しながら、クリスティーナが助け舟を出した。

「ルイーズ、今日はわたくしもお義母様の離宮に泊まるから、ピッパの勉強時間は短めにしてやってちょうだい」

 ルイーズはイジドーラが頷くのを確認してから、クリスティーナに頭を垂れた。

「仰せのままに、王女殿下」

「まあ、お姉様の言うことは素直にきくのね! わたくしの言うことなど、ちっともきかないくせに!」

 不満そうなピッパにルイーズは片眉を上げた。

「すぐにお勉強をさぼろうとするピッパ様のおっしゃることなど、従う義務はございません。さあ、参りますよ」

 不満そうにしながらも、ピッパはルイーズに従った。

「では、みな様、失礼いたします」
 扉の手前で美しいお辞儀を披露すると、ピッパは最後にハインリヒに向き直った。

「お兄様、アンネマリーのこと、よろしくお願いしますわね」
 そう言い残して嵐のような妹姫は、扉の向こうへと消えていった。

(なんていうか……子供って残酷(ざんこく)だな)

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