氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
わずかに残る記憶の中の実母は、確かに髪の色も目の色も自分と同じだった。将来自分はこんな大人になるのだろうと思えるほどに、自分と実母は似ていると思う。
王城で鎧の大公に母親に間違えられたし、王妃付きの女官も自分の顔を見て母マルグリットの名を呼んでいた。
しかしリーゼロッテは、王城の離宮でイジドーラ王妃に言われたこともひっかかっていた。
「王妃様はマルグリット母様のことをご存じなのでしょうか……?」
リーゼロッテの突然の問いかけに、クリスタはジルケの顔を見た。姉のジルケの方が、マルグリットやイジドーラと親しかったからだ。
「ええ、もちろん。イジドーラ様もマルグリット様も、前王妃であるセレスティーヌ様の話し相手として、よく王城へ呼ばれていたから……。でも、どうしてそんなことをリーゼは聞くの?」
ジルケ自身もまた王妃の話し相手の一人として登城していたため、三人で顔を合わせることは多かった。
だが、マルグリットとイジドーラは、まるで水と油のような関係だった。表面上は穏やかにやっていたが、お互いが公爵家令嬢という立場上、慣れ合うことはできなかったのかもしれない。
そのふたりのどちらとも親しくしていたジルケは、あくまで中立の立場を貫いていたし、セレスティーヌ王妃もそんなふたりをただ見守っているだけだった。
「王城で……わたくしの顔を見た王妃様が、あまり似ていないとおっしゃったのです」
「そう……イジドーラ様が……」
少し考え込んだ後、ジルケはくすりと笑った。
「でも、言われてみればそうね。リーゼはマルグリット様にそっくりだけれど、性格はまるで似てないわ。マルグリット様は言いたいことははっきりとおっしゃる、どちらかというと男気溢れる方だったから……。そう言う意味ではリーゼロッテとは正反対ね」
実の母親が男気溢れる公爵令嬢だったと言われて、リーゼロッテは戸惑った。記憶の中の母は儚げな印象だったので、余計にそう感じてしまう。
「リーゼの性格はどちらかというとクリスタ似ね」
おっとりとして振る舞いも優雅なクリスタと並ぶリーゼロッテは、容姿は全く似てないものの、どこからみても似た者母娘だ。ふたりの醸し出す雰囲気が、周囲にそう感じさせている。
王城で鎧の大公に母親に間違えられたし、王妃付きの女官も自分の顔を見て母マルグリットの名を呼んでいた。
しかしリーゼロッテは、王城の離宮でイジドーラ王妃に言われたこともひっかかっていた。
「王妃様はマルグリット母様のことをご存じなのでしょうか……?」
リーゼロッテの突然の問いかけに、クリスタはジルケの顔を見た。姉のジルケの方が、マルグリットやイジドーラと親しかったからだ。
「ええ、もちろん。イジドーラ様もマルグリット様も、前王妃であるセレスティーヌ様の話し相手として、よく王城へ呼ばれていたから……。でも、どうしてそんなことをリーゼは聞くの?」
ジルケ自身もまた王妃の話し相手の一人として登城していたため、三人で顔を合わせることは多かった。
だが、マルグリットとイジドーラは、まるで水と油のような関係だった。表面上は穏やかにやっていたが、お互いが公爵家令嬢という立場上、慣れ合うことはできなかったのかもしれない。
そのふたりのどちらとも親しくしていたジルケは、あくまで中立の立場を貫いていたし、セレスティーヌ王妃もそんなふたりをただ見守っているだけだった。
「王城で……わたくしの顔を見た王妃様が、あまり似ていないとおっしゃったのです」
「そう……イジドーラ様が……」
少し考え込んだ後、ジルケはくすりと笑った。
「でも、言われてみればそうね。リーゼはマルグリット様にそっくりだけれど、性格はまるで似てないわ。マルグリット様は言いたいことははっきりとおっしゃる、どちらかというと男気溢れる方だったから……。そう言う意味ではリーゼロッテとは正反対ね」
実の母親が男気溢れる公爵令嬢だったと言われて、リーゼロッテは戸惑った。記憶の中の母は儚げな印象だったので、余計にそう感じてしまう。
「リーゼの性格はどちらかというとクリスタ似ね」
おっとりとして振る舞いも優雅なクリスタと並ぶリーゼロッテは、容姿は全く似てないものの、どこからみても似た者母娘だ。ふたりの醸し出す雰囲気が、周囲にそう感じさせている。