氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
◇
「あの……ヴァルト様」
「なんだ?」
「なんだか大ごとになってしまい、申し訳ありません……」
「いや、問題ない」
だだっぴろい公爵家の晩餐の部屋にある優に五十人は座れそうな長テーブルのお誕生日席に、リーゼロッテはジークヴァルトと並んで座っていた。
(こういったとき、向かい合わせで座るものではないのかしら?)
そう思いつつも、支度された席以外に着くわけにもいかなかった。
もっと気安くおしゃべりできるような食事の席を想像していたのだが、ここは大物芸能人の結婚披露宴の会場ですか? というように飾り立てられた晩餐テーブルを前に、リーゼロッテは困惑と動揺を隠せない。
「食前酒でございます」
エッカルトが高級そうなボトルを持ち、静かにグラスへと葡萄色の液体を注いでいく。
「わたくし、お酒は……」
「心得ております。こちらは果実水となっておりますので、雰囲気だけでもお楽しみください」
そう言いながら、ジークヴァルトのグラスにも同じものを注いでいく。
「ヴァルト様はお飲みにならなくてよろしいのですか?」
「ああ」
気にもとめていないようにジークヴァルトはそっけなく言った。
(ヴァルト様もお酒が飲めないのかしら……?)
ここブラオエルシュタインでは、飲酒は成人を迎えた十五歳から許される。極寒の北国であるがゆえに、体を温めるという意味合いもあるため、紅茶にアルコールを入れることもしばしばだ。紅茶にたらすくらいの量なら、子供も口にしていいというおおらかさがこの国には昔から根付いていた。
しかし、リーゼロッテは義父であるフーゴから、外では絶対にアルコールを摂取しないようきつく言われている。
「あの……ヴァルト様」
「なんだ?」
「なんだか大ごとになってしまい、申し訳ありません……」
「いや、問題ない」
だだっぴろい公爵家の晩餐の部屋にある優に五十人は座れそうな長テーブルのお誕生日席に、リーゼロッテはジークヴァルトと並んで座っていた。
(こういったとき、向かい合わせで座るものではないのかしら?)
そう思いつつも、支度された席以外に着くわけにもいかなかった。
もっと気安くおしゃべりできるような食事の席を想像していたのだが、ここは大物芸能人の結婚披露宴の会場ですか? というように飾り立てられた晩餐テーブルを前に、リーゼロッテは困惑と動揺を隠せない。
「食前酒でございます」
エッカルトが高級そうなボトルを持ち、静かにグラスへと葡萄色の液体を注いでいく。
「わたくし、お酒は……」
「心得ております。こちらは果実水となっておりますので、雰囲気だけでもお楽しみください」
そう言いながら、ジークヴァルトのグラスにも同じものを注いでいく。
「ヴァルト様はお飲みにならなくてよろしいのですか?」
「ああ」
気にもとめていないようにジークヴァルトはそっけなく言った。
(ヴァルト様もお酒が飲めないのかしら……?)
ここブラオエルシュタインでは、飲酒は成人を迎えた十五歳から許される。極寒の北国であるがゆえに、体を温めるという意味合いもあるため、紅茶にアルコールを入れることもしばしばだ。紅茶にたらすくらいの量なら、子供も口にしていいというおおらかさがこの国には昔から根付いていた。
しかし、リーゼロッテは義父であるフーゴから、外では絶対にアルコールを摂取しないようきつく言われている。