氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 この際だから、お願いしたいことはすべて聞いてみよう。今なら大抵のことは許してもらえそうな気がして、リーゼロッテは期待に満ちた瞳をジークヴァルトに向けた。

「却下だ」
「ええ!?」

 あまりにも即答だったので、思わず非難めいた言葉が出てしまった。

「言っただろう。人が集まる場所には異形も集まる。街に出ると、アレを大量生産することになるぞ」

 くいと顔で示した方向いるのは、言わずと知れたおめめきゅるるん隊である。

「……(いさぎよ)(あきら)めますわ」

 ぐうの音も出ない理由に、リーゼロッテは(うなず)くより他はなかった。自分が歩けば異形が寄ってくる。力ある者が多くいる公爵家ならまだしも、不特定多数の人間が集まる場所では、周囲にどんな影響が出るかはわからない。

「いつかオレが連れて行ってやる」

 顔を上げると、無表情だがどこか穏やかな顔のジークヴァルトと目が合った。しかし、ジークヴァルトと一緒では、目立つこと請け合いだ。到底お忍びにはならないだろう。
 忙しいジークヴァルトなりの社交辞令なのかもしれない。あまり期待しないでおこうと思いながらも「楽しみにしております」とリーゼロッテは微笑み返した。

 ふわりと美味しそうな匂いがしてきて、ふたりの前に淡いクリーム色のスープが一皿運ばれてきた。寒い国だからかもしれないが、ブラオエルシュタインでは前菜として、まずスープが出てくることが多い。

「ジャガイモのポタージュでございます」
 給仕の使用人がスープを置くと、頭を下げて下がっていく。

(ジャガイモはジャガイモなのね)

 この世界にはリンゴそっくりなビョウのように、名前の違う似たようなものもあるし、見た目も中身もそっくりな同じ名前ものがあったりもする。かと思えば見た目そっくりな全く違うものもあるので、日本での常識のままでいると痛い目にあうことがある。何かと油断大敵だ。

 まあ、公爵家で出てくるものはどれもおいしいので、ジャガイモという名の全く違う味のスープだったとしても、何も問題はないだろう。

< 98 / 684 >

この作品をシェア

pagetop