さくらびと。 恋 番外編(3)
「(先生の隣に座りたいなぁ……)」
そんな思いを押し殺し、蕾はグラスに注がれた酎ハイを手に取った。
普段はアルコールを控えているのに、なぜか今日は飲みたくなった。
一口啜ると、ほのかな苦味と甘さが広がり、喉を熱く焼いた。
「桜井さん、大丈夫?あんまりお酒飲まないタイプじゃなかったっけ?」
横に座った吉岡さんが心配そうに声をかける。
「うん……でも今日は少し飲もうかな。」
「そっかぁ、じゃぁ私もー!」
隣の吉岡さんはメニュー表をみて、どれにしようか悩ましげに呟いていた。
笑顔を作りながら答える蕾。
その視界の端では、有澤先生が若い看護師たちと談笑している。笑い声が聞こえるたびに胸が痛んだ。
(どうしてあんなに自然に笑えるんだろう……)
自分の前では周りの目もあっていつも少しぎこちないのに。
そう考え始めると、どんどん気持ちが沈んでいった。気づけばグラスは空になり、手酌で次のお酒を注いでいた。