さくらびと。 恋 番外編(3)
「え、どうしたの?顔赤いけど…」
吉岡さんの問いに慌てて首を振る。
「え?あ……ちょっと暖房が強くて……」
その嘘を信じてくれたようで吉岡さんは納得した表情を見せた。
だが蕾の胸の高鳴りは収まらない。
予防接種リストに集中しようとしても、頭の中は彼のことでいっぱいだった。
「次の方どうぞー、」
呼びかける声も僅かに震えているかもしれない。
それでも必死に平静を装った。
白衣を纏う有澤先生の背中を見つめる度に、身体の芯が熱くなっていくのを感じる。
冷たい冬の空気とは裏腹に、病院内の一部屋だけは二人の間で生まれる熱気で満たされていた。