寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 涙の残る頬にそっと口づける。

(どうか……どうか、心から味方になってくれる人が、ツェツィーリア様のそばにいますように)

 訪れたまどろみのまま、意識が沈んでいく。互いに守り合うかのように、まるくなってふたりで眠った。

     ◇
 帰郷の準備が整って、ルカと共にジークヴァルトが待つエントランスへと向かった。見送りの使用人たちもずらりと並んでいる。

「ジークヴァルト様、ルカ共々お世話になりました」
「義兄上、今回はとても有意義な時間を過ごせました。このような素晴らしい機会を与えてくださいましたこと、心より感謝いたします」
「ああ、またいつでも来るといい」

 笑顔で見上げたルカの頭を、ジークヴァルトは大きな手でぽんと撫でた。ルカが視線を向けると、少し遠くにいたツェツィーリアは盛大にぷいと顔をそむけた。

「ツェツィーも今日、レルナー家に帰ることになった」
「そうなのですね……」

 リーゼロッテは一週間程度で、また公爵家を訪れる予定になっていた。その時にまた一緒に過ごせるだろうと思っていただけに、落胆も大きく感じられる。

「ツェツィー様」

 ルカの呼びかけにも、ツェツィーリアは視線を合わせようとしない。ルカは目の前で(ひざまず)き、ツェツィーリアの手を取った。下から覗き込むようにその顔を見上げる。

「ツェツィーリア様……わたしのことを忘れないでいてくださいますか?」
「わ、忘れたりはしないわ。ルカはわたくしの記憶力を馬鹿にしているの?」
「あなたのように美しい方は、これからも多くの男に望まれるでしょう。そんな中、わたしの存在など、ツェツィー様の記憶の奥底に沈んでしまわないかと不安なのです」

 きゅっと握る手に力を入れられて、ツェツィーリアはみるみるうちに真っ赤になった。

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