寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「ルカ様、リーゼロッテお嬢様、お帰りなさいませ」
 ダーミッシュ家の家令であるダニエルが、一行を迎えた。

「あら? お義父様とお義母様は?」
「おふたりはご旅行からまだ帰っておられません。昨日お戻りになる予定でしたが、道の整備が入ったとかで、少々回り道を余儀なくされたと連絡がございました。公爵様に直接ご挨拶申し上げられないこと、(あるじ)にかわり謝罪申し上げます」

 ダニエルが深々と頭を下げると、ジークヴァルトはその顔をすぐ上げさせた。

「いい、オレも連絡は受けている。長居するつもりはない。気を使わなくていい」
 そう言うと、ジークヴァルトはリーゼロッテに視線を戻した。

「ダーミッシュ嬢、お前の部屋はどこだ?」
「わたくしの部屋でございますか?」
「ああ、中を確かめたい」

 その台詞にダニエルとエラが目を見合わせた。だが、公爵の命令に(いな)を言える者はこの場にいない。言われるがまま、ジークヴァルトをリーゼロッテの自室へと案内することになった。

「ジークヴァルト様、こちらですわ」

 長いこと使っていなかった自室に入る。部屋はいつも使用人が掃除をしてくれるので、汚れたところはないはずだ。だが、自分の部屋に家族以外を入れるとなると、やはり緊張してしまう。
 エラも一緒に着いてきてくれている。心強く感じてほっと息をつくと、次いでリーゼロッテは部屋をぐるりと見まわした。

(変なものは置いてないわよね)
 読みかけの本とか、ちょっとした落書きとか、もしかしたらそんなものはあるかもしれない。

「ああ、久しぶりのお部屋は落ち着きますわ~」

 見られたくないものがあったら速攻で隠そうと、リーゼロッテは何気ないふりを装って、部屋の中をうろうろと歩き回った。

 そんなリーゼロッテをしり目に、ジークヴァルトは確かめるように部屋の中をゆっくりと歩いていく。この部屋にはジークヴァルトが贈ってくれた、調度品が一式置かれている。今思えばこれらはすべて、フーゲンベルク家のブランド家具だったのだ。

< 109 / 403 >

この作品をシェア

pagetop