寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 ジークヴァルトはその調度品をひとつひとつ確認しながら、部屋の中を一周した。時折手をかざし、青い力を注いでいる。

(あ……この家具にもみんな、守り石が埋め込まれているんだわ)

 今さらながらそんなことに気づく。一回りする頃には、部屋中がジークヴァルトの力であふれていた。
 衣裳部屋や書斎にも足を踏み入れると、ジークヴァルトは同じように力を注いでいった。

「寝室はどこだ?」

 最後にそう言われ、ぐっと言葉を詰まらせる。だがこの流れで、「それはちょっと」と拒否することは難しかった。
 難色を示す表情のエラに微笑んで、リーゼロッテはジークヴァルトを寝室へと通した。いずれは夫婦となる身、ここでびびっていても仕方がない。

(まあ、ヴァルト様にしてみれば、子供部屋に入るのも同然だもの)

「こちらですわ」
 綺麗に整えられたリネンに、なんだかほっとする。貴族はベッドメイキングも日々三ツ星ホテル並みなのだ。

 ジークヴァルトは迷いなく寝台へと歩を進めた。ヘッドボードに片手をつき、しばし考え込むように動きを止める。

「ほぼ無くなっているな」

 そうひとりごちながら、今まで以上の勢いでその青い力を注いでいく。みるみるうちに寝台がジークヴァルトの力で覆われていった。

 あの寝台は物心がついたころから使っている。ほかの調度品は、去年になってようやく使いだしたものばかりなので、力の消費はそれほど多くなかったのかもしれない。逆に小さいころから使っていた寝台は、守り石の力がすっからかんだったということだろう。

(それにしても、めっちゃジークヴァルト様だわ……)

 そこここからジークヴァルトの力の気配がする。なんだかここが自分の部屋とは思えず、奇妙な気分になってきた。

「これで当分は大丈夫だ」
 そう言ってジークヴァルトは振り返った。

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