寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 ジークヴァルトはすぅっと息を吸って、守り石に唇を寄せた。瞳を閉じたまま、力を注いでいく。王城でいつも見ていた光景を、リーゼロッテは不思議な気分で眺めていた。

(あの頃はチェーンが短くて、もっと密着してたっけ)

 ジークヴァルトの髪が触れるのがくすぐったくて、一生懸命それを我慢していたことを思い出した。

 守り石が大きく輝いて、中の青がゆらりと揺らめいた。いつ見ても美しい光景だ。
 これがどれだけすごいことなのか、今だからこそ理解ができる。たゆとうように揺らめく青に魅入られたまま、瞬きもせずそれを見守った。

 ふいに顔を上げたジークヴァルトと目が合った。ジークヴァルトの瞳もいつも綺麗だ。吸い込まれそうな瞳だとそんなことを思って、その青とじっと見つめあっていた。

 首もとでしゅるりと音がした。次いで、ぷちぷちと音が鳴る。まるでブラウスのリボンをほどき、ボタンをはずしているようなそんな音だ。

(ん? 胸元がやけにスースーするわ)
 そんなはずはないと思いながらも、自分の胸に視線を落とす。見ると、ジークヴァルトの大きな手が、いそいそとブラウスのボタンを外しているところだった。

「ほあっ! え? 何?」
「問題ない、じっとしていろ」

 思わずジークヴァルトの手首をつかむが、その動きはまるで止まらない。あっという間にブラウスは、胸の際どい所まで開かれてしまった。

(え? ちょっ、待って、何? 何なの一体!?)

 半ばパニック状態で身をよじる。ここのところバストアップをさぼっていた。今日は長距離移動することもあり、締めつけるようなコルセットも、ましてや盛り盛りの詰め物もしていない。
(こ、小胸がヴァルト様にバレてしまう……!)

「すぐに済む。いいからおとなしくしていろ」
 両手首を取られて、動きを封じられる。ソファに身を沈めたままのリーゼロッテの胸元に、ジークヴァルトは顔をうずめてきた。

「ふっ、あ……」
 なけなしの胸の谷間の少し上にある、龍のあざに口づけられる。突然灯った強い熱に、リーゼロッテは思わずジークヴァルトの頭にしがみついた。

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