寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「え? ウルリーケ様が?」
「はい、エマニュエル様のお話では、あまりご容態はよろしくないそうで……」

 合間の休憩としてカイと紅茶を飲んでいると、エラがそんな話を切り出してきた。ウルリーケはエーミールの祖母だ。会ったのは一度だけだが、手紙でのやり取りは今でも続いている。

「お手紙ではそんなご様子はなかったけれど……」

 元王族であるウルリーケは気位の高い女性だ。高齢ではあるが、グレーデン家の女帝として君臨(くんりん)し、その存在を恐れる貴族は数多い。他人に弱みを見せるなど、恥と思っているような人物だった。

「ウルリーケ様が亡くなったら、グレーデン家はたいへんになるだろうね。彼女、降嫁(こうか)するときに王家から鉱脈の採掘権を携えてきたけど、相続はできずに王家に返還されることが決まってるから」

 ウルリーケも高齢で、おいしい思いができるのは今のうちだ。そんな思惑の中、採掘を巡ってグレーデン領では、富の奪い合いが起きている。後先を考えない無茶な採掘が繰り返され、労働条件の劣悪化が激しいとの報告も、王家へと上がっていた。

「そんなことも相まって、グレーデン領の治安はあまりよくないみたい。グレーデン侯爵もウルリーケ様の言いなりで、事なかれ主義を貫いてるし」
「そうなのですね……」

 リーゼロッテの表情が曇る。女性の噂話と違って、カイが言うと事実の裏打ちがなされていそうで、信ぴょう性も増してくる。その話を、エラも悲しそうな顔で聞いていた。

「ウルリーケ様にもしもの事があったら、グレーデン家は多分、今の地位を維持するのは難しくなるよ。侯爵は当てにならないし、跡継ぎのエルヴィン殿は病弱って話だし」
「エルヴィン様?」
「エルヴィン様はエーミール様のお兄様でいらっしゃいます」

 補足するようにエラが言った。以前グレーデン家に行ったとき、侯爵のエメリヒには偶然会ったが、それ以外は人の気配すら感じられなかった。

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