寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
ツェツィーリアがへそを曲げたとき、ルカはその思いを受け止めようと、根気よく対話を続けていた。それに、ツェツィーリアのためにいろんな情報を仕入れ、知ろうとする努力を今でも怠らないでいる。それこそ、ツェツィーリアを取り巻くすべてのことを、理解しようとしている勢いだ。
「でしたら、わたくしができることは何かございませんか? ヴァルト様にばかりに負担を強いているようで、わたくし……」
「いい。お前に落ち度はない。ダーミッシュ嬢はそのままでいればいい」
「そのまま……」
リーゼロッテは口をつぐんだ。ジークヴァルトはいつもそう言う。そう言って、リーゼロッテを遠ざける。
「では、わたくしはこのまま何もせず、当たり前のように守られていればそれでいいと、ジークヴァルト様はそうおっしゃるのですか?」
「ああ、そうだ」
顔をそらした髪から雫が落ちて、ジークヴァルトのシャツをまだらに濡らしていく。洗いざらしの髪の横顔は、いつもよりもずっと子供っぽく見えた。
ハンカチを取り出して、リーゼロッテはその雫をぬぐおうとした。その髪に届く前に大きな手に掴まれる。
「いい。お前が濡れる」
ぐいと押し戻されて、どうしたらいいのかもうわからなくなってしまった。だが、こんなかみ合わないやり取りは、今日に始まったことではない。
「わたくしは、何のためにヴァルト様の横にいるのでしょう」
「……お前は、オレの託宣の相手だ」
今にも泣きそうな瞳で見上げるリーゼロッテに、そんな言葉が返ってきた。リーゼロッテから目をそらし、風が叩き続ける窓に向き直る。その後ジークヴァルトは、不機嫌そうに黙りこくった。
「そう……でしたわね」
リーゼロッテも反対の窓に目を向けた。要するに自分である必要はないのだ。託宣の相手だから守りはするが、干渉はされたくない。それならそうと、はっきり言ってくれた方が気が楽なのに。
だが、リーゼロッテはそれ以上何も言えなかった。言ってしまったら、今度こそ、涙が溢れそうだった。
「でしたら、わたくしができることは何かございませんか? ヴァルト様にばかりに負担を強いているようで、わたくし……」
「いい。お前に落ち度はない。ダーミッシュ嬢はそのままでいればいい」
「そのまま……」
リーゼロッテは口をつぐんだ。ジークヴァルトはいつもそう言う。そう言って、リーゼロッテを遠ざける。
「では、わたくしはこのまま何もせず、当たり前のように守られていればそれでいいと、ジークヴァルト様はそうおっしゃるのですか?」
「ああ、そうだ」
顔をそらした髪から雫が落ちて、ジークヴァルトのシャツをまだらに濡らしていく。洗いざらしの髪の横顔は、いつもよりもずっと子供っぽく見えた。
ハンカチを取り出して、リーゼロッテはその雫をぬぐおうとした。その髪に届く前に大きな手に掴まれる。
「いい。お前が濡れる」
ぐいと押し戻されて、どうしたらいいのかもうわからなくなってしまった。だが、こんなかみ合わないやり取りは、今日に始まったことではない。
「わたくしは、何のためにヴァルト様の横にいるのでしょう」
「……お前は、オレの託宣の相手だ」
今にも泣きそうな瞳で見上げるリーゼロッテに、そんな言葉が返ってきた。リーゼロッテから目をそらし、風が叩き続ける窓に向き直る。その後ジークヴァルトは、不機嫌そうに黙りこくった。
「そう……でしたわね」
リーゼロッテも反対の窓に目を向けた。要するに自分である必要はないのだ。託宣の相手だから守りはするが、干渉はされたくない。それならそうと、はっきり言ってくれた方が気が楽なのに。
だが、リーゼロッテはそれ以上何も言えなかった。言ってしまったら、今度こそ、涙が溢れそうだった。