寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
「旦那様、いきなりいなくなるのは、もう勘弁してくださいよ」
「非常事態だ」
ふいと顔をそらすジークヴァルトに、マテアスはわざとらしく大きなため息をついた。
「そう言ったご事情なら仕方ないですけどね、心配して探し回るこちらの気持ちもお察しください」
「分かっている」
リーゼロッテが戻ってきたというのに、ジークヴァルトは不機嫌なままだ。予定よりも三時間以上も早く会えたのだ。もっと浮かれていても良さそうなものだった。
「道中、喧嘩でもなさったのですか?」
戻ってきたリーゼロッテも口数が少なかった。みなに笑顔は向けていたものの、その顔を見たエラの反応を見ると、やはりいつもと様子が違っていたのだろう。
「そんなものはしていない」
「でしたらどうしてリーゼロッテ様は、あんなにも落ち込んでおられたのでしょう?」
ぐっと眉根を寄せたジークヴァルトに、マテアスは馬車の中でどんな会話をしたのかを問いただした。基本ジークヴァルトは、マテアスの言うことは素直に聞き入れる。従者という立場であるが、子供の頃からマテアスは、ジークヴァルトにとっては兄のような存在だった。
「なるほど、わかりました。要するに旦那様は、公爵家の呪いを発動させたくなくて、リーゼロッテ様にわざとそっけなくされたというわけですね?」
ふいと顔をそむけるジークヴァルトに、マテアスは困ったような顔を向けた。その努力は褒めてやりたいが、話を聞いた限りでは、リーゼロッテが誤解するのも無理はないだろう。ジークヴァルトがこんなにも及び腰になるのは、リーゼロッテに対してだけだ。普段の判断能力が嘘のように思えてくる。
「なんにせよ、ヴァルト様は圧倒的に言葉が足りないですね。少しは努力をしないと、本当に嫌われますよ」
マテアスの苦言に、ジークヴァルトはただ言葉を詰まらせた。
「旦那様、いきなりいなくなるのは、もう勘弁してくださいよ」
「非常事態だ」
ふいと顔をそらすジークヴァルトに、マテアスはわざとらしく大きなため息をついた。
「そう言ったご事情なら仕方ないですけどね、心配して探し回るこちらの気持ちもお察しください」
「分かっている」
リーゼロッテが戻ってきたというのに、ジークヴァルトは不機嫌なままだ。予定よりも三時間以上も早く会えたのだ。もっと浮かれていても良さそうなものだった。
「道中、喧嘩でもなさったのですか?」
戻ってきたリーゼロッテも口数が少なかった。みなに笑顔は向けていたものの、その顔を見たエラの反応を見ると、やはりいつもと様子が違っていたのだろう。
「そんなものはしていない」
「でしたらどうしてリーゼロッテ様は、あんなにも落ち込んでおられたのでしょう?」
ぐっと眉根を寄せたジークヴァルトに、マテアスは馬車の中でどんな会話をしたのかを問いただした。基本ジークヴァルトは、マテアスの言うことは素直に聞き入れる。従者という立場であるが、子供の頃からマテアスは、ジークヴァルトにとっては兄のような存在だった。
「なるほど、わかりました。要するに旦那様は、公爵家の呪いを発動させたくなくて、リーゼロッテ様にわざとそっけなくされたというわけですね?」
ふいと顔をそむけるジークヴァルトに、マテアスは困ったような顔を向けた。その努力は褒めてやりたいが、話を聞いた限りでは、リーゼロッテが誤解するのも無理はないだろう。ジークヴァルトがこんなにも及び腰になるのは、リーゼロッテに対してだけだ。普段の判断能力が嘘のように思えてくる。
「なんにせよ、ヴァルト様は圧倒的に言葉が足りないですね。少しは努力をしないと、本当に嫌われますよ」
マテアスの苦言に、ジークヴァルトはただ言葉を詰まらせた。