寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
「リーゼロッテお姉様っ」
いきなり部屋に半泣きのツェツィーリアが飛び込んできた。驚きながらもこの胸に受け止める。えぐえぐと泣き出した小さな体を、リーゼロッテはぎゅっと抱きしめた。
「ツェツィーリア様、一体どうなさったのですか……?」
「お義父さまがっ、わた、わたくしの、こっ……ん、を……たって……」
しゃくりあげながら口にする言葉は要領を得ない。エラと共に困惑していると、開け放たれたままの部屋の扉が、控えめにノックされた。
「うちのお嬢様が不躾に失礼いたしました」
「あなたは確か……」
「はい、ツェツィーお嬢様の従者を務めさせて頂いております、グロースクロイツでございます」
ひょろりとした長身を腰折って、グロースクロイツは胸に手を当てゆっくりと頭を下げた。
「今回も先ぶれなく来てしまいましたので、わたしはひとまず公爵様にご挨拶を申し上げに行って参ります。申し訳ないのですが、しばらくの間、ツェツィー様のことをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんそれは構わないけれど……一体何があったのですか?」
リーゼロッテにしがみついたまま、ツェツィーリアは泣きじゃくっている。その髪をやさしくなでながら、リーゼロッテはグロースクロイツの顔を見た。
「実は旦那様が、ツェツィー様のご婚約者をお決めになられまして。それを知ってレルナー家を飛び出してきたというわけです」
その言葉に、ツェツィーリアの泣き声がパワーアップする。耳を塞ぎたくなる大音量に、実際にグロースクロイツは、人目もはばからずに自身の耳を塞ぎにかかった。
「またしばらくの間、こちらにお世話になるかと思います。どうぞツェツィー様のこと、よろしくお願いいたします」
ふたたび腰を折ると、扉を閉めてグロースクロイツは行ってしまった。
「ツェツィーリア様……」
義理とは言えレルナー公爵は、ツェツィーリアの父親であり後見人だ。その決定を他者が覆すことなどできはしない。
(ルカ……)
ツェツィーリアとの婚約のため、懸命に努力を重ねていた義弟を思う。このタイミングでツェツィーリアの婚約者が決まってしまったことに、リーゼロッテもショックを受けていた。
瞳にじわりと涙がにじむ。
抱き合ったままふたりは、長いことおいおいと泣き続けた。
「リーゼロッテお姉様っ」
いきなり部屋に半泣きのツェツィーリアが飛び込んできた。驚きながらもこの胸に受け止める。えぐえぐと泣き出した小さな体を、リーゼロッテはぎゅっと抱きしめた。
「ツェツィーリア様、一体どうなさったのですか……?」
「お義父さまがっ、わた、わたくしの、こっ……ん、を……たって……」
しゃくりあげながら口にする言葉は要領を得ない。エラと共に困惑していると、開け放たれたままの部屋の扉が、控えめにノックされた。
「うちのお嬢様が不躾に失礼いたしました」
「あなたは確か……」
「はい、ツェツィーお嬢様の従者を務めさせて頂いております、グロースクロイツでございます」
ひょろりとした長身を腰折って、グロースクロイツは胸に手を当てゆっくりと頭を下げた。
「今回も先ぶれなく来てしまいましたので、わたしはひとまず公爵様にご挨拶を申し上げに行って参ります。申し訳ないのですが、しばらくの間、ツェツィー様のことをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんそれは構わないけれど……一体何があったのですか?」
リーゼロッテにしがみついたまま、ツェツィーリアは泣きじゃくっている。その髪をやさしくなでながら、リーゼロッテはグロースクロイツの顔を見た。
「実は旦那様が、ツェツィー様のご婚約者をお決めになられまして。それを知ってレルナー家を飛び出してきたというわけです」
その言葉に、ツェツィーリアの泣き声がパワーアップする。耳を塞ぎたくなる大音量に、実際にグロースクロイツは、人目もはばからずに自身の耳を塞ぎにかかった。
「またしばらくの間、こちらにお世話になるかと思います。どうぞツェツィー様のこと、よろしくお願いいたします」
ふたたび腰を折ると、扉を閉めてグロースクロイツは行ってしまった。
「ツェツィーリア様……」
義理とは言えレルナー公爵は、ツェツィーリアの父親であり後見人だ。その決定を他者が覆すことなどできはしない。
(ルカ……)
ツェツィーリアとの婚約のため、懸命に努力を重ねていた義弟を思う。このタイミングでツェツィーリアの婚約者が決まってしまったことに、リーゼロッテもショックを受けていた。
瞳にじわりと涙がにじむ。
抱き合ったままふたりは、長いことおいおいと泣き続けた。