寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「これは非常にまずいですねぇ」

 リーゼロッテはあの日以来、部屋に(こも)りきりで姿を見せない。ツェツィーリアもべったりとくっついて、そのそばを離れようとしなかった。ジークヴァルトの呼び出しにも、なんだかんだと理由をつけられて、断られ続けてもう数日が経過していた。

「旦那様、本当にお心あたりはないんですね?」
「ない」

 ふいと顔をそらすジークヴァルトを胡乱気(うろんげ)に見やってから、マテアスは集まった面々をぐるりと見渡した。
 今、執務室内にいるのは、ジークヴァルトとマテアスをはじめ、家令のエッカルト、侍女長でその妻のロミルダ、そしてジークヴァルトの父ジークフリートの従兄(いとこ)であるユリウスだ。

 この集会の議題はただひとつ。『ジークヴァルトがリーゼロッテに嫌われちゃったかも! これはなんとかしなければならない由々しき事態、みんなで力を合わせて知恵を絞ろう会議』のはじまりだ。

「リーゼロッテ様のご様子がおかしくなったのは、いつ頃からなのですかな?」
「わたしが感じたところ、ダーミッシュ領からこちらにお戻りになられてからのように思います。それ以前も、多少落ち込んでおられる様子はございましたが」
「そうねぇ……エラ様もいらっしゃるし、わたしはあまりリーゼロッテ様のおそばにはいませんでしたから。これといって感じることはなかったですねぇ」

 エッカルトの問いかけに、マテアスとロミルダが順に意見を言った。

「エマニュエル様なら、何かご存じかもしれませんねぇ」
「でも、あの()は今子爵家のことで手一杯のようだから」

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