寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 エマニュエルは子爵夫人となったが、ロミルダとエッカルトの娘だ。ダーミッシュ領に滞在していた彼女なら、重要証言が得られるかもしれない。

「そんなもの、ジークヴァルトが一言、リーゼロッテに謝れば済むんじゃないのか?」
「謝るようなことはしていない」

 ユリウスの言葉に、ジークヴァルトが無表情で即座に返した。

「理由なんてそんなもんなくたっていいんだよ。女が可愛く()ねてるときは、とりあえず男が折れとけば丸く収まるってもんさ」
「こちらが怒っている理由が分からないくせに、形だけ謝られても、女としてはちっともうれしくないですけどねぇ」

 ユリウスの顔をロミルダは呆れたように見やった。

「エマニュエルの手はいつ頃空きそうですかな?」
「何でも子爵家で、旅芸人を迎え入れての(もよお)しをやるそうで、その切り盛りがたいへんだって言ってましたわねぇ。ちょうど今日あたりの日程だったかしら?」
「旅の芸人ですかの?」
「ああ、今、貴族の間で流行ってるやつだな。行商人が芸を見せたり観劇をやったりするんだろう? 女子供が好きそうなやつだ」

 肩をすくませてユリウスが言うと、マテアスが突然ガタっと立ち上がった。

「それです……!」

 どれだよ。心中で一同がそう突っ込んだとき、マテアスの頭の中では、ジークヴァルトとリーゼロッテの関係修復計画が、着々と練られていたのであった。

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