寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
 毛足の長いふかふかの絨毯(じゅうたん)の上、これまたふかふかのクッションにうずもれながら、リーゼロッテはテーブルの上を見やった。背の低いテーブルには、珍しい食材を使った料理や、見たこともないフルーツが、所狭しと並んでいる。

(アラブの富豪にでもなった気分だわ)

 絨毯の上に直接座り、ご馳走をいただくなど、この世界に生まれて初めての事だった。すべてがひと口大に盛られているため、まるで高級ブッフェにでも来たような気分だ。

「不思議な食べ物ばかりですわね」
「西から来た行商人だそうだ。この料理は西部で採れる食材が使われている」

 隣であぐらをかくジークヴァルトにそう言われ、リーゼロッテはなるほどと頷いた。出かけるまでもなく、地方の味覚が楽しめるのだ。こうした旅の行商人を招くのが、貴族の間で流行(はや)るのも分かる気がする。

 これから旅芸人による観劇が行われる。飲食しながら、優雅に劇を鑑賞するのだ。貴族とはこんな贅沢ができるのかと、今さらながらに感嘆してしまった。

「あの、ジークヴァルト様……このような機会を設けてくださいまして、本当にありがとうございます」

 最近()け気味とはいえ、人としてお礼は言っておくのが筋だろう。そう思って、隣を見上げたリーゼロッテを、ジークヴァルトは静かに見下ろしてきた。
「ああ」
 そう言って、手を伸ばしてくる。髪を梳かれるのだと思った瞬間、反対隣りに座っていたツェツィーリアに、強く腕を引っ張られた。

「お姉様、劇はまだ始まらないの? すぐに見られないなんて、わたくし気に入らないわ」
 紅潮した頬で問うてくる。期待に満ちたその顔は、だいぶ興奮しているようだ。

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