寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
劇に夢中になっているリーゼロッテたちを後ろから見やりながら、マテアスはひとり歯噛みしていた。
(旦那様との仲直り計画が……!)
ツェツィーリアのみならず、アデライーデまで乱入してくるとは。いかにマテアスをしても、これは大きな誤算だった。綿密な計画を立て、この場を急ぎセッティングしたのだ。それをことごとく妨害されて、マテアスのイライラは頂点極まっていた。
マテアスの計画ではこうだった。
ふかふかの絨毯の上、ジークヴァルトの膝に乗せられたリーゼロッテが、観劇を夢中になって見つめている。
危険なシーンではハラハラした顔で。甘いシーンには頬を染め。そんなリーゼロッテを、ジークヴァルトは愛おしそうに見つめている。
マテアスがリクエストした通りに、悲恋のストーリーが演じられていく。その哀しい結末に、リーゼロッテの大きな瞳から、はらはらと涙がこぼれ落ちた。
それをそっとぬぐうジークヴァルト。
叶わなかった劇中の恋に、リーゼロッテの心は打ちひしがれたままだ。
「ジークヴァルト様……」
「オレはずっとお前のそばにいる」
頬を伝う涙にそっと口づけると、リーゼロッテはぎゅっとジークヴァルトに抱き着いた。
「ヴァルト様、もうわたくしを離さないで」
「ああ、愛してる……リーゼロッテ」
ぶちゅっ
(と、熱い口づけを交わしたおふたりは、永遠の愛を再認識するはずだったのに……!)
がりがりと天然パーマの髪をかきむしりながら、マテアスはアデライーデの背中を睨みつけた。
「せめてアデライーデ様がいなければ……」
夢中になっているリーゼロッテの肩を、やさしく抱き寄せることくらいはできたはずだ。
殺気交じりの視線を感じたのか、ふいにアデライーデが振り返った。半眼で睨み返されて、マテアスは負けじと、しっしと追い払うような仕草をした。
じ ゃ ま を し な い で く だ さ い よ
口パクでそう伝えると、アデライーデは意地悪くふふんと笑みを作った。これ見よがしにリーゼロッテを抱き寄せる。
「なっ!」
思わず出そうになった大声を、マテアスは寸でのところで飲み込んだ。
(き、鬼畜の所業……!)
こうしてマテアスの仲直り計画は、あっさりともろくも崩れ去ったのだった。
劇に夢中になっているリーゼロッテたちを後ろから見やりながら、マテアスはひとり歯噛みしていた。
(旦那様との仲直り計画が……!)
ツェツィーリアのみならず、アデライーデまで乱入してくるとは。いかにマテアスをしても、これは大きな誤算だった。綿密な計画を立て、この場を急ぎセッティングしたのだ。それをことごとく妨害されて、マテアスのイライラは頂点極まっていた。
マテアスの計画ではこうだった。
ふかふかの絨毯の上、ジークヴァルトの膝に乗せられたリーゼロッテが、観劇を夢中になって見つめている。
危険なシーンではハラハラした顔で。甘いシーンには頬を染め。そんなリーゼロッテを、ジークヴァルトは愛おしそうに見つめている。
マテアスがリクエストした通りに、悲恋のストーリーが演じられていく。その哀しい結末に、リーゼロッテの大きな瞳から、はらはらと涙がこぼれ落ちた。
それをそっとぬぐうジークヴァルト。
叶わなかった劇中の恋に、リーゼロッテの心は打ちひしがれたままだ。
「ジークヴァルト様……」
「オレはずっとお前のそばにいる」
頬を伝う涙にそっと口づけると、リーゼロッテはぎゅっとジークヴァルトに抱き着いた。
「ヴァルト様、もうわたくしを離さないで」
「ああ、愛してる……リーゼロッテ」
ぶちゅっ
(と、熱い口づけを交わしたおふたりは、永遠の愛を再認識するはずだったのに……!)
がりがりと天然パーマの髪をかきむしりながら、マテアスはアデライーデの背中を睨みつけた。
「せめてアデライーデ様がいなければ……」
夢中になっているリーゼロッテの肩を、やさしく抱き寄せることくらいはできたはずだ。
殺気交じりの視線を感じたのか、ふいにアデライーデが振り返った。半眼で睨み返されて、マテアスは負けじと、しっしと追い払うような仕草をした。
じ ゃ ま を し な い で く だ さ い よ
口パクでそう伝えると、アデライーデは意地悪くふふんと笑みを作った。これ見よがしにリーゼロッテを抱き寄せる。
「なっ!」
思わず出そうになった大声を、マテアスは寸でのところで飲み込んだ。
(き、鬼畜の所業……!)
こうしてマテアスの仲直り計画は、あっさりともろくも崩れ去ったのだった。