寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
 終幕に盛大な拍手を送る。哀しい恋の結末に、リーゼロッテとツェツィーリアは目を赤く腫らしていた。すんと鼻をすすり、なんとなくな流れでお互いを抱きしめ合う。いまだ余韻が醒めなくて、いつになくふたりは無口なままでいた。

 いつの間にか片付けられたテーブルに、今度は様々な宝飾品が並べられていった。劇中で使われた指輪やネックレス、そのほか(ゆかり)ある品が目に入る。
 ざっと見たところ、それほど高価な物ではなさそうだ。どちらかというと、劇と連動したグッズ販売のようだった。

「さあ、お嬢様方。お気になったものはどうぞ手にとってご覧ください」

 重ねた手をもみ込みながら、行商の男はにっこりと笑った。こういった時、何も買わないのはマナー違反だ。価値のない物だと分かっていても、招いた以上はそれなりの施しをするのが貴族の役目だった。

「わたくし、これがいいわ」

 先ほどの感動はどこへやら、ツェツィーリアはもう選ぶのに夢中になっている。そのツェツィーリアが手にしたのは、水色の綺麗な石がついたペンダントだった。

「素敵な石がついておりますわね」
 その石の色はまるで義弟(ルカ)の瞳のようで、リーゼロッテは微笑まし気にツェツィーリアの顔を見やった。その様子にツェツィーリアは、慌てたように唇を尖らせる。

「べ、別にルカの瞳に似てるからって、これを選んだわけではないわ」
「あら、誰もそんなこと言ってないじゃない」

 アデライーデが意地悪そうに言うと、一瞬ツェツィーリアは口をつぐんだ。

「やっぱりほかのにするわ!」
 顔を赤くしたツェツィーリアを制して、リーゼロッテはそのペンダントを首にかけてやった。ツェツィーリアの胸に輝く水色を見て、満足そうに頷いて見せる。

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