寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「とってもお似合いですわ」
「お姉様がどうしてもって言うなら、わたくしこれにしてあげてもいいわ」
「ええ、そうしていただけますと、わたくしもうれしいですわ」

 リーゼロッテがそう言うと、ツェツィーリアもほっとしたような笑顔を向けた。

「そちらのお嬢様には、これなどがおすすめです」

 行商の男が青い石のブローチを勧めてくる。リーゼロッテがジークヴァルトの婚約者だと知っているのだろう。男は次から次に、青い石がついた宝飾を並べ立てていった。
「どれもお似合いですよ」

 こびへつらうような笑いに、困ったような顔を返す。ジークヴァルトの顔を立てるなら、自分はこのまま青い宝飾を選ぶべきなのだろう。

「青の飾りはいっぱい持っているから、たまにはほかの色もつけてみたいわ」

 気づくとそんな言葉が口から漏れていた。はっと我に返るも、一度出した発言をなかったことになどできはしない。怖くてジークヴァルトの顔が見られない。リーゼロッテはぎゅっと唇を噛み締めた。

「それならこれはどう?」
 気にも溜めていない様子で、アデライーデが緑のイヤリングを手に取った。リーゼロッテの瞳よりもくすんでいるが、小ぶりな石がゆらゆらと揺れる様は、乙女心をくすぐるデザインだ。

「素敵ですわね。わたくしそれがいいですわ」

 自分の色ならば、選んだとしても角は立たないだろう。言い訳がましく思ったものの、ジークヴァルトに笑顔を向けることが、リーゼロッテにはできなかった。

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