寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
「ツェツィーリア様、こちらへ」
手を引きながら、行商の男と距離を取る。男は持っていた箱を手落とすと、懐から短剣を取り出した。虚ろな瞳のまま、リーゼロッテたちの元へと歩を進めてくる。
恐怖で震えるツェツィーリアの手を掴み、先の見えない廊下を走りだした。このまま進めばジークヴァルトの部屋がある。守りが厚いあの場所まで行けば、何とかなるかもしれなかった。
「ツェツィーリア様、頑張ってくださいませ」
何度も振り返りながら先を急いだ。進んでも進んでも、男は短剣を手に追ってくる。
「きゃあっ」
ツェツィーリアが床に足を取られて盛大に転んだ。つられてリーゼロッテも膝をつく。
どべしゃ、と腹ばいになったツェツィーリアの目の前で、リーゼロッテはそれはそれは優雅に可憐に転んで見せた。そんな場合ではないのは分かっているが、格の違いを見せつけられて、悔しさにツェツィーリアは涙目になった。
「ツェツィーリア様っ」
引き寄せて膝立ちのまま背にかばう。ゆらりと立つ男を前に、リーゼロッテは勇気を振り絞って立ち上がった。その時、男の輪郭がぶれ、異形の影が妖し気に揺らめいた。
取り憑かれているこの男は、ただ巻き込まれた被害者なのだ。それが分かると、リーゼロッテは決意したように大きく頷いた。
「ここはわたくしにお任せください」
慌てなければ大丈夫だ。ここ最近、力の制御もうまくなってきた。そう自分に言い聞かせながら、リーゼロッテは握りこんだ手のひらへと自身の力を集めていった。
最大限に集まったことを確認すると、大きく振りかぶって手のひらを男へと押し出した。緑の力が放射状に広がって、ふわりと男の体を包み込む。
キラキラと緑が収束していく様を、ツェツィーリアと共に固唾を飲んで見守った。かばうように腕を上げていた男が、次の瞬間、こちらに顔を向けた。
「ツェツィーリア様、こちらへ」
手を引きながら、行商の男と距離を取る。男は持っていた箱を手落とすと、懐から短剣を取り出した。虚ろな瞳のまま、リーゼロッテたちの元へと歩を進めてくる。
恐怖で震えるツェツィーリアの手を掴み、先の見えない廊下を走りだした。このまま進めばジークヴァルトの部屋がある。守りが厚いあの場所まで行けば、何とかなるかもしれなかった。
「ツェツィーリア様、頑張ってくださいませ」
何度も振り返りながら先を急いだ。進んでも進んでも、男は短剣を手に追ってくる。
「きゃあっ」
ツェツィーリアが床に足を取られて盛大に転んだ。つられてリーゼロッテも膝をつく。
どべしゃ、と腹ばいになったツェツィーリアの目の前で、リーゼロッテはそれはそれは優雅に可憐に転んで見せた。そんな場合ではないのは分かっているが、格の違いを見せつけられて、悔しさにツェツィーリアは涙目になった。
「ツェツィーリア様っ」
引き寄せて膝立ちのまま背にかばう。ゆらりと立つ男を前に、リーゼロッテは勇気を振り絞って立ち上がった。その時、男の輪郭がぶれ、異形の影が妖し気に揺らめいた。
取り憑かれているこの男は、ただ巻き込まれた被害者なのだ。それが分かると、リーゼロッテは決意したように大きく頷いた。
「ここはわたくしにお任せください」
慌てなければ大丈夫だ。ここ最近、力の制御もうまくなってきた。そう自分に言い聞かせながら、リーゼロッテは握りこんだ手のひらへと自身の力を集めていった。
最大限に集まったことを確認すると、大きく振りかぶって手のひらを男へと押し出した。緑の力が放射状に広がって、ふわりと男の体を包み込む。
キラキラと緑が収束していく様を、ツェツィーリアと共に固唾を飲んで見守った。かばうように腕を上げていた男が、次の瞬間、こちらに顔を向けた。