寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 思わずその顔を見上げる。ジークハルトは少し困ったような笑顔で見つめ返してきた。

『龍はこの国の成り立ちそのもの。それに向けられる悪意を引き受けるのが、フーゲンベルクの役割だから』
「龍に向けられる悪意……?」
『そう、異形の者は龍を憎んでいる。理由も何も分からないままにね』
「異形が龍を?」
『まあ、被害者としては当然の意識だよね』

 そのときジークヴァルトが(わず)かに身じろいだ。はっとなりその蒼白な顔を見つめる。(すべ)り落ちた布はもう(ぬく)まっていて、額には再び汗がにじんでいた。

「ヴァルト様……」

 汗をぬぐい、氷水に(ひた)した布を額に乗せる。今、自分にできることはこれだけだ。

『ヴァルトが今何を思っているか教えてあげようか?』

 突然そんなことを言われ、リーゼロッテは(いぶか)し気にジークハルトを見上げた。

『オレとヴァルトは意識がつながってるから、ヴァルトがリーゼロッテをどう思ってるかも教えてあげられるよ?』
「ですが……」

 いくら守護者と言えど、他人の口から本音を漏らされるのは、ジークヴァルトも嫌だろう。そう思って、リーゼロッテは静かに首を振った。

「ヴァルト様がわたくしを子供扱いしているのは、十分に分かっておりますから」
『子供扱いねえ』

 頭の後ろで手を組んだまま、愉快そうに体を傾ける。そんな様子のジークハルトに、リーゼロッテは不満そうに唇を尖らせた。

「だってそうでございましょう?」
『ジークヴァルトの中でリーゼロッテって、割とすごいことになってるよ?』
「すごいことに?」

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