寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 首をかしげると、ジークハルトは力強く頷いた。

『うん。かなり、結構、ものすごく』

 にっこりと言い切るジークハルトに、リーゼロッテは唇をかみしめた。ジークヴァルトの中で、自分はそんなにもお荷物なモンスターになっているのだろうか。

 その時、ジークヴァルトの口から苦しそうな息が漏れた。はっとなり、再び視線を戻す。

『ねえ、リーゼロッテ。ヴァルトの手、握ってあげてよ。それだけでも十分(いや)しになるから』

 戸惑いながらもリネンの中、ジークヴァルトの腕を探す。大きな手を両手で握ると、いつになく乱れた青の力を感じた。
 いつも髪をやさしく()いてくれる手は、熱を持ったまま微動だにしない。汗ばんだ手に指を絡め、リーゼロッテは包むようにきゅっと握りしめた。

『少しずつでいいから、リーゼロッテの力を分けてあげて』

 言われるがまま、手のひらに向けて意識を集中する。瞳を閉じて、一心に願った。

 早く意識が戻るように。早く痛みと熱が引くように。そして、早く、その瞳に自分を映してほしい――

 つないだ手の中、青と緑が混じり合っていく。ジークヴァルトの気が穏やかになっていくのを感じて、リーゼロッテは祈るように力を(そそ)ぎ続けた。
 流れゆく力と共に、まどろみが訪れる。その手を握りしめたまま、リーゼロッテは深い眠りに落ちた。それでもなお、力は静かに注がれ続ける。

『ありがとう、リーゼロッテ』

 無意識のまま癒し続けるリーゼロッテの寝顔を見つめ、ジークハルトはその耳元で(ささや)いた。

『ーーヴァルトを救えるのは、君だけだから』

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