寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 それでも拒絶されるのは怖かった。何度訴えても、自分の言葉はジークヴァルトに届かなかったから。

「家族というものは、きっと、なろうと思ってなれるものではないのだろうね。クリスタを妻に迎えて、リーゼロッテがやってきて、ルカを授かって。血のつながりがどうとかは関係ない。共に過ごしてきた時間、重ねてきた思い。笑ったり、泣いたり、時には喧嘩をしたり。それをたくさん積み重ねて、自然と家族になっていくのではないのかな。わたしはそんなふうに思うよ」

 そこまで言うとフーゴは、リーゼロッテの顔を伺うように覗き込んだ。

「どうだい? ジークヴァルト様とはもう少し頑張れそうかい?」

 フーゴの言葉にリーゼロッテは大きく頷いた。自分はもっと、ジークヴァルトを知る努力を、そして、自分を知ってもらう努力をするべきだ。

「でも、よく話してくれたね。お前はわたしたちの大事な娘だ。もし、本当につらくなったら、いつでもダーミッシュ家に帰ってきていいのだからね」
「はい、フーゴお義父様……」
「リーゼが我が家に来てくれたからこそ、わたしはクリスタと本当の家族になれた。ルカを授かったのも、お前のおかげだと思っているんだ。リーゼロッテ、わたしたちの娘になってくれて、心から感謝しているよ」

 そう言って、フーゴはリーゼロッテをやさしく抱きしめた。何かあったとき、ちゃんと帰る場所がある。そのことが心強く思えて、リーゼロッテの頬を安堵の涙が伝った。

「わたくしもお義父様の娘でいられて、本当にしあわせですわ」

 今だけは許される気がして、リーゼロッテはしばらくの間、フーゴの胸で子供のように泣き続けた。

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