寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
意識が戻って数日、絶対安静を言い渡されているジークヴァルトは、相変わらず書類仕事をしているようだった。リーゼロッテはそれを阻止するために、足しげくジークヴァルトのもとに通っていた。
「またお仕事をなさっているのですか? お医者様にも無理しないよう言われておりますでしょう?」
寝室に入るなり、書類を手にするジークヴァルトに声を荒げた。来るたびにこんな調子なので、挨拶よりも先に小言が口をついてしまう。
フーゴと話をして以来、リーゼロッテはジークヴァルトときちんと向き合うことを決めていた。
(お前はそのままでいいと、何度もヴァルト様に言われてきたもの)
だから、我慢はしないことにした。ある程度開き直らなければ、ジークヴァルト相手では同じことをただ繰り返しかねない。
「お願いだからマテアスも、もっとちゃんと気を遣ってちょうだい。でないとわたくし、ずっとここで見張ることにするわ」
「そうしていただけますと、旦那様の回復も抜群に早まりそうですねぇ。急ぎの書類には目を通していただきましたので、今日の所はリーゼロッテ様のおっしゃる通りにいたしましょう」
書類の束を抱えると、マテアスはジークヴァルトの顔を見た。
「では、旦那様。薬湯をしっかり飲んでお休みになってくださいね。リーゼロッテ様、後ほど母が参りますので、それまで旦那様のことよろしくお願いいたします」
「ええ、まかせてちょうだい」
腕まくりをする勢いでリーゼロッテは頷いた。マテアスが出ていった寝室は、ジークヴァルトとふたりきりだ。だが、そんなことを意に介するリーゼロッテではない。
「さあ、ヴァルト様。こちらをお飲みになってから、横になってくださいませ」
薬湯の入ったグラスをずいと差し出した。なみなみと注がれている液体は、黒とも緑ともつかないおどろおどろしい色をしている。その味は超激マズと言っていい。リーゼロッテも昔、怪我をしたときに飲んだことがあるが、これを飲むくらいなら二度と怪我はすまいと心に誓ったリーゼロッテだ。
意識が戻って数日、絶対安静を言い渡されているジークヴァルトは、相変わらず書類仕事をしているようだった。リーゼロッテはそれを阻止するために、足しげくジークヴァルトのもとに通っていた。
「またお仕事をなさっているのですか? お医者様にも無理しないよう言われておりますでしょう?」
寝室に入るなり、書類を手にするジークヴァルトに声を荒げた。来るたびにこんな調子なので、挨拶よりも先に小言が口をついてしまう。
フーゴと話をして以来、リーゼロッテはジークヴァルトときちんと向き合うことを決めていた。
(お前はそのままでいいと、何度もヴァルト様に言われてきたもの)
だから、我慢はしないことにした。ある程度開き直らなければ、ジークヴァルト相手では同じことをただ繰り返しかねない。
「お願いだからマテアスも、もっとちゃんと気を遣ってちょうだい。でないとわたくし、ずっとここで見張ることにするわ」
「そうしていただけますと、旦那様の回復も抜群に早まりそうですねぇ。急ぎの書類には目を通していただきましたので、今日の所はリーゼロッテ様のおっしゃる通りにいたしましょう」
書類の束を抱えると、マテアスはジークヴァルトの顔を見た。
「では、旦那様。薬湯をしっかり飲んでお休みになってくださいね。リーゼロッテ様、後ほど母が参りますので、それまで旦那様のことよろしくお願いいたします」
「ええ、まかせてちょうだい」
腕まくりをする勢いでリーゼロッテは頷いた。マテアスが出ていった寝室は、ジークヴァルトとふたりきりだ。だが、そんなことを意に介するリーゼロッテではない。
「さあ、ヴァルト様。こちらをお飲みになってから、横になってくださいませ」
薬湯の入ったグラスをずいと差し出した。なみなみと注がれている液体は、黒とも緑ともつかないおどろおどろしい色をしている。その味は超激マズと言っていい。リーゼロッテも昔、怪我をしたときに飲んだことがあるが、これを飲むくらいなら二度と怪我はすまいと心に誓ったリーゼロッテだ。