寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
(今日は眠らないように気をつけなくちゃ)

 ロミルダに起こされるまで、ジークヴァルトの布団につっぷして眠ってしまった。ちょっぴりよだれを垂らしていたことは、誰にも内緒だ。

 中に手を差し込んで、ジークヴァルトの腕を探す。胸の上で組まれていたそれをようやく探し当てると、リーゼロッテは逆にその手を掴みとられた。

(え!? あっ、ちょっと……!)

 あれよあれよという間に、布団の中に引き込まれていく。気づくとリーゼロッテは、ジークヴァルトの腕にがっちりとホールドされていた。頭の上からすやすやとした寝息が聞こえてくる。完全に寝ぼけているようだ。

(さすがにこれはまずいわよね)

 ロミルダが来る前に脱出しなくては。その腕から抜け出そうと、リーゼロッテはそうっと体を動かした。

「ひぁっ!」

 その瞬間、ジークヴァルトが長い足を(から)めてくる。柔道の寝技のように雁字(がんじ)(がら)めにされて、リーゼロッテはさらに身動きが取れなくなった。

(う、動けない……)

 寝台の中、ジークヴァルトの腕に抱かれたまま、時間だけが過ぎていく。カチコチと鳴る時計の音と、ジークヴァルトの寝息だけが規則正しく響いていった。
 ここのところ心労がたまりすぎて、寝不足の日々が続いていた。あたたかな(ぬく)もりに、リーゼロッテもなんだか眠くなってきてしまった。

(きっと、ロミルダが起してくれるわ……)

 ジークヴァルトが寝ぼけてやったことだ。抱き枕の代わりになったくらいで、自分が(とが)められることはないだろう。そう思ってリーゼロッテは、穏やかなまどろみに、その身をゆだねていった。

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