寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
書類の束を抱えながらマテアスが廊下を歩いていると、執務室の前に誰か人影がいるのが分かった。
「エラ様?」
驚いて駆け寄ると、エラは思いつめたような表情をしていた。
「マテアス……少し相談したいことがあるのですが」
「わかりました。中でお聞きしましょう」
執務室に招き入れたマテアスは、エラのために紅茶を淹れて差し出した。
「足の具合はいかがですか? 歩くのには支障はないようですが、ご無理はなさいませんよう」
「ありがとう、マテアス。でも、わたしの足はもう治りましたので」
「それは何よりです。それで、ご相談と言うのは、リーゼロッテ様に関することでございますか?」
マテアスが問いかけると、エラは真剣な表情で見返してきた。
「マテアス、お願いです! わたしに稽古をつけてください!」
「え? 稽古でございますか?」
分からないといったふうに首をかしげたマテアスの手を、エラはがばっと両手でつかみ取った。
「剣術でも、体術でもかまいません! わたしに指南してほしいのです!」
「しかし、ご令嬢のエラ様にそのようなことは……」
「お嬢様が襲われた時、わたしは何もできなかったんです! 護身術程度なら身につけてはいましたが、今のまま、あんなことがまた起きたらと思うと、わたし本当に恐ろしくて……」
涙ながらに訴えられて、マテアスは困惑の表情を浮かべた。
「鍛えたところで、マテアスのように戦えるとは思っていません。でも、お嬢様を守る盾くらいにはなりたいんです」
「……分かりました。エラ様相手とは言え、やるからには手加減はいたしませんよ?」
エラに手を取られたまま、マテアスは真摯な顔つきで言った。
「望むところです」
揺らがないままエラはマテアスをじっと見上げる。その決意に応えるように、マテアスは強く頷き返した。
書類の束を抱えながらマテアスが廊下を歩いていると、執務室の前に誰か人影がいるのが分かった。
「エラ様?」
驚いて駆け寄ると、エラは思いつめたような表情をしていた。
「マテアス……少し相談したいことがあるのですが」
「わかりました。中でお聞きしましょう」
執務室に招き入れたマテアスは、エラのために紅茶を淹れて差し出した。
「足の具合はいかがですか? 歩くのには支障はないようですが、ご無理はなさいませんよう」
「ありがとう、マテアス。でも、わたしの足はもう治りましたので」
「それは何よりです。それで、ご相談と言うのは、リーゼロッテ様に関することでございますか?」
マテアスが問いかけると、エラは真剣な表情で見返してきた。
「マテアス、お願いです! わたしに稽古をつけてください!」
「え? 稽古でございますか?」
分からないといったふうに首をかしげたマテアスの手を、エラはがばっと両手でつかみ取った。
「剣術でも、体術でもかまいません! わたしに指南してほしいのです!」
「しかし、ご令嬢のエラ様にそのようなことは……」
「お嬢様が襲われた時、わたしは何もできなかったんです! 護身術程度なら身につけてはいましたが、今のまま、あんなことがまた起きたらと思うと、わたし本当に恐ろしくて……」
涙ながらに訴えられて、マテアスは困惑の表情を浮かべた。
「鍛えたところで、マテアスのように戦えるとは思っていません。でも、お嬢様を守る盾くらいにはなりたいんです」
「……分かりました。エラ様相手とは言え、やるからには手加減はいたしませんよ?」
エラに手を取られたまま、マテアスは真摯な顔つきで言った。
「望むところです」
揺らがないままエラはマテアスをじっと見上げる。その決意に応えるように、マテアスは強く頷き返した。