寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
 浅いまどろみから醒めかけて、腕の中の温もりを確かめるように抱き寄せた。薄く瞳を開くと、目の前にリーゼロッテがいる。いつもの夢だ。そう思ってジークヴァルトは、その綺麗な(ひたい)に口づけた。

(あたたかい……)

 きゅっと抱きしめると、リーゼロッテが胸にすり寄ってくる。しあわせそうな寝顔を見つめ、ジークヴァルトはためらいもせずその唇を塞いだ。

 柔らかな感触に、夢中になって口づける。幾度も(つい)ばむようにするうちに、物足りなくなって小さな唇にゆっくりと舌を()わせた。くすぐったそうに逃げる頭を押さえて、ジークヴァルトはさらに深く口づけていった。

 ふわりとそこから入り込んでくる緑の力を感じて、ジークヴァルトは突如、我に返った。
 唇を濡らしたままのリーゼロッテが、目の前に横たわっていた。長い髪を枕に預けて、無防備な寝顔を惜しげもなくさらしている。
 もぞりと体を動かすと、ドレスの下をむき出しにして、自分の足と絡め合っているのが分かった。

「――……!」

 状況をつぶさに把握した体に熱が集まっていく。動揺が頂点に達しようとしたとき、リーゼロッテの瞳がゆっくりと開かれた。

「ジークヴァルト様……?」

 不思議そうに首を小さくかしげると、リーゼロッテはあふと小さなあくびをひとつした。しばらくぼんやりとした様子でいたが、状況を理解したのか、その頬が次第に朱に染まっていった。

「申し訳ございません。気持ちがよくって、わたくしもつい眠ってしまって……」
「い、いや……」

 ジークヴァルトは歯切れ悪くただ動揺していた。今、自分は彼女に何をしていたのか? 冷静にならなくてはと思うのだが、集まった熱がそれを許そうとはしてくれない。

 ジークヴァルトがもぞりと下半身をずらすと、リーゼロッテがはっとした表情をした。あらぬ欲情を抱いているのがバレたのか。ジークヴァルトは動揺からその顔を凝視すると、リーゼロッテは心得たというように大きく頷いた。

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