寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「わたしたちにできることは、ディートリンデ奥様と御子を全力をもってお守りすることだ。いいか、エマニュエル。異形の悪意は、時に近しい人間に向けられることもある。アデライーデお嬢様に危害が及ばぬよう、決しておそばを離れるのではないぞ」
「わかったわ、父さん。任せてちょうだい」
「いい返事だ」

 エマニュエルが力強く頷くと、エッカルトは目を細めてその頭をやさしくなでた。

「ボクは何をすればいいの?」
 期待を込めて言ったマテアスに、エッカルトは視線を落とす。

「お前は今まで通り、お生まれになる御子のために勉学に励みなさい。御子を生涯お支えするのがお前の役目。そのための努力を怠ってはならない。分かるか? マテアス」
「うん、父さん」

 物心ついた時からそう言い聞かされて、そのためにずっと努力してきた。だが御子と言われても、マテアスにはいまだピンとくるものはない。とは言え、新しい知識を学ぶことは楽しかったので、とりあえず素直に返事をしておいた。


 数か月経って、マテアスは母ロミルダに連れられ、ディートリンデの元に(おもむ)いた。

「ここは旦那様のお部屋?」
「ええ、そうよ。ここはフリート様のお力の加護がある場所だから、異形からリンデ様と御子様を守ってくださるの。いい? マテアス。くれぐれもリンデ様に失礼のないようにね」
「うん、母さん」
「うん、ではないでしょう? これからはきちんと敬語を話さなくてはね?」
「はい、母さん」

 緊張顔で頷くと、ロミルダはマテアスを抱きしめた。

「大丈夫よ。マテアスは今まで頑張ってきたでしょう? もし失敗してしまったら、そこからきちんと学べばいいわ」

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