寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
ディートリンデは苦し気に、ゆりかごの中のジークヴァルトをみやる。出産と共に守護者の声は聞こえなくなってしまった。ジークハルトと名乗った声だけの守護者は、掴みどころのない飄々とした人物だった。いてもいなくても役立たずな存在が、ただひたすら腹立たしく思えてならない。
今はジークフリートの力に守られた部屋にいる。だが、ここを一歩でも出たが最後、狂ったように異形の者が襲いかかってくるのだ。おかげでディートリンデは身重の間に、この部屋から出ることは叶わなかった。外の空気すら吸えない日々に、気が滅入ったのは言うまでもない。
それに耐えられたのは、ひとえにこの身に我が子を宿していたからだ。外に出られないことよりも、四六時中まとわりついてくる夫に辟易していたディートリンデだ。
「王城までの道のりも危険だということですね?」
「……恐らくは」
道中はジークフリートをはじめ、フーゲンベルク家にいる力ある者総出で護衛することになっている。
「大旦那様は来てはくださらないのですか?」
「ジークベルト様は辺境の地を守られているもの。それにお義母様のご容態も思わしくないようだし……」
夫であるジークフリートの力は決して弱いものではない。だが、先代公爵のジークベルトはそれをはるかに凌駕していた。そんな義父がいてくれたなら。この先の不安を思い、ディートリンデは再びため息をついた。
今はジークフリートの力に守られた部屋にいる。だが、ここを一歩でも出たが最後、狂ったように異形の者が襲いかかってくるのだ。おかげでディートリンデは身重の間に、この部屋から出ることは叶わなかった。外の空気すら吸えない日々に、気が滅入ったのは言うまでもない。
それに耐えられたのは、ひとえにこの身に我が子を宿していたからだ。外に出られないことよりも、四六時中まとわりついてくる夫に辟易していたディートリンデだ。
「王城までの道のりも危険だということですね?」
「……恐らくは」
道中はジークフリートをはじめ、フーゲンベルク家にいる力ある者総出で護衛することになっている。
「大旦那様は来てはくださらないのですか?」
「ジークベルト様は辺境の地を守られているもの。それにお義母様のご容態も思わしくないようだし……」
夫であるジークフリートの力は決して弱いものではない。だが、先代公爵のジークベルトはそれをはるかに凌駕していた。そんな義父がいてくれたなら。この先の不安を思い、ディートリンデは再びため息をついた。