寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「いたっ」

 突然、頭頂部にこつんと硬い何かが当たって、マテアスは思わず声を上げた。天然パーマの髪にひっかかっているものを手に取ると、それは青く輝く小ぶりな守り石だった。続けてこつこつこつと絶え間なく頭上に降ってくる。

「いたっいたっいたっ」

 頭をかばいながら振り向くと、背を向けたジークヴァルトが、箱から石を取っては後ろ手にこちらに放り投げている。慌てて飛んでくる石をひとつひとつキャッチした。落として割らないようにとシャツの(すそ)で包むと、あっという間にずしりと中身がいっぱいになる。

「守り石はとても貴重なものなんですよ! 遊んでは駄目ですっ!!」
「遊んでなんかいない」

 振り返ったジークヴァルトは、仏頂面のまま最後の石を真っすぐに投げてきた。それを顔面すれすれで受け止めると、マテアスの目の前で石の青が揺らめいた。

「なんて綺麗な守り石なんだ……」

 見るとシャツで包んだ石のすべてが、同じように()も言われぬ輝きを放っている。ジークヴァルトに渡したのは、力を注ぐ前のくすんだ石だ。それをこの短時間でこれほど完璧に力を籠めたというのか。まだ年端(としは)もいかないジークヴァルトに、自分では到底及ばない底知れぬものをマテアスは感じた。

「言われた通り全部やった。今から厩舎に行く」
「だから駄目ですってば。旦那様たちが出かけられて屋敷中が手薄な状態なんです。今は我慢なさってください」

 そう言い聞かせ続けて幾日も経つ。そろそろ不満が爆発しそうな(あるじ)を前に、マテアスは何とか気をそらそうと試みる。

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