寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
エラが男爵令嬢となったのは六歳の時だ。それまでは商家の娘として過ごしてきたので、今のルチアの立場に一番近い。そう思ってリーゼロッテはエラにも同じ席についてもらったのだ。
急に貴族となった少女への配慮だが、エラにしてみればリーゼロッテの手を煩わせるのが嫌なだけだ。自分が矢面に立てばそれで済むだろうという思惑の方が強かった。
「ルチア様はブルーメ家の遠縁の方とおっしゃっていたものね。それで養子に迎えられたのかしら?」
「はい、知らない間にそういうことに……あ、いえ! そうです、その通りです!」
「戸惑うことも多いでしょうから、エラだけでなくわたくしのことも頼ってくださいませね?」
「は、はい、ありがとうございます」
リーゼロッテの淑女の笑みを間近で見たからだろう。ルチアが狼狽したように真っ赤になった。
「今日はビョウのタルトを用意してもらったの。ルチア様はビョウはお好きかしら?」
「あっはい、好きです」
「よかった、公爵家のお菓子は絶品なの。さあ、遠慮せずにお召し上がりになって」
勧められるままルチアはフォークでタルトをすくいとった。皿を鳴らすこともなく、底の硬いタルトを一口大に切り分ける。これは作法がなってないと、容易にできることではなかった。
決していじわるではなかったが、タルトを用意したのはどの程度淑女教育がなされているかを見極めるためだ。初日からそこまですることもないとリーゼロッテは思ったが、これを提案したのはエラの方だ。
「どうかしら?」
「とてもおいしいです」
「よかったですわ」
ほほ笑むと、再びルチアは顔を赤くした。
「ルチア様は所作がお綺麗ね。わたくしが教えることなど何もなさそうだわ。ね、エラ?」
「はい、お言葉遣いはもう少しお気をつけになった方がいいかと思いますが、お作法は文句のつけどころがございませんね」
エラはそのことに驚いていた。どんなガサツな令嬢が来るかと身構えていたので、正直拍子抜けしてしまった。言葉遣いは最悪黙っていればいい。だが所作だけはどうあっても誤魔化しようがない。ルチアの立ち居振る舞いは、見苦しいところなどひとつも見うけられなかった。
急に貴族となった少女への配慮だが、エラにしてみればリーゼロッテの手を煩わせるのが嫌なだけだ。自分が矢面に立てばそれで済むだろうという思惑の方が強かった。
「ルチア様はブルーメ家の遠縁の方とおっしゃっていたものね。それで養子に迎えられたのかしら?」
「はい、知らない間にそういうことに……あ、いえ! そうです、その通りです!」
「戸惑うことも多いでしょうから、エラだけでなくわたくしのことも頼ってくださいませね?」
「は、はい、ありがとうございます」
リーゼロッテの淑女の笑みを間近で見たからだろう。ルチアが狼狽したように真っ赤になった。
「今日はビョウのタルトを用意してもらったの。ルチア様はビョウはお好きかしら?」
「あっはい、好きです」
「よかった、公爵家のお菓子は絶品なの。さあ、遠慮せずにお召し上がりになって」
勧められるままルチアはフォークでタルトをすくいとった。皿を鳴らすこともなく、底の硬いタルトを一口大に切り分ける。これは作法がなってないと、容易にできることではなかった。
決していじわるではなかったが、タルトを用意したのはどの程度淑女教育がなされているかを見極めるためだ。初日からそこまですることもないとリーゼロッテは思ったが、これを提案したのはエラの方だ。
「どうかしら?」
「とてもおいしいです」
「よかったですわ」
ほほ笑むと、再びルチアは顔を赤くした。
「ルチア様は所作がお綺麗ね。わたくしが教えることなど何もなさそうだわ。ね、エラ?」
「はい、お言葉遣いはもう少しお気をつけになった方がいいかと思いますが、お作法は文句のつけどころがございませんね」
エラはそのことに驚いていた。どんなガサツな令嬢が来るかと身構えていたので、正直拍子抜けしてしまった。言葉遣いは最悪黙っていればいい。だが所作だけはどうあっても誤魔化しようがない。ルチアの立ち居振る舞いは、見苦しいところなどひとつも見うけられなかった。