寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
 あてがわれた部屋を手早くチェックして、ベッティは所在なさげにしているルチアを振り返った。

「お食事はこのお部屋に用意していただけるとのことですのでぇ、その前に湯あみでもなさいませんかぁ?」
「そうね……できたら汗を流したいかも」

 というより、この苦しいドレスを一刻も早く脱いでしまいたいのがルチアの本音だ。ベッティにもその気持ちはよく理解できたので、すぐさま準備に取りかかる。市井で育った身にしてみれば、コルセットはただの拷問器具だ。

 ルチアの背に回ってドレスの背中のボタンをはずす。コルセットの(ひも)(ゆる)めてやると、ルチアは大きく息を吸った。

「ふふぅ、苦しかったですねぇ」

 やけにうれしそうに言われて、ルチアはちょっとむっとした顔をした。

「馬鹿にしているわけではございませんよぅ。わたしも身代わりを買って出て、締め上げられた経験がございますのでぇ」
「え? 侍女ってそんなこともするの?」
「いいえぇ、わたしは侍女としてできる方なのでぇ、いろいろとオプション付けてやらせていただいてますぅ」
「オプション?」

 わからないといったふうにルチアは(いぶか)しげな顔をした。

「まぁまぁそれはさておきまして全部脱いでしまいましょうかぁ。このベッティがお背中流しますよぅ」
「自分でできるからいいわ!」

 手で体を(かば)うようにして、ルチアはさっと距離を空けた。一気に警戒心が跳ね上がった様子に、ベッティはおや? という顔をする。

「何も恥ずかしがることはございませんよぅ。わたしはいろんな高貴な方のお体を見てまいりましたしぃ、貴族の方は使用人の目などいちいち気にされないものですよぅ」
「だって、わたし本当は貴族なんかじゃないもの」
「ぶっちゃけ貴族の地位はお金で買えたりもしますからねぇ。王に認められたのならルチア様は立派な貴族の一員ですぅ」

 そう言いながらルチアの身ぐるみをはがしにかかる。

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